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それは「おとなりさんの部屋」だ。

 盗聴器もカメラも仕掛けていないから、隣の部屋に何があるのか、おとなりさんが何をしているのか、あの部屋で起こることは知らない。薄い壁の向こうから聞こえてくる物音が全て。



 
 もしも、万が一。いや、億が一。
 いつかこの気持ちを伝えて、私がおとなりさんと結ばれれば。




 あの部屋のことはその時の楽しみにとっておいているのだ。




 だから必死に守る。汚い目をした人達から。

 



 「…ふふっ。何作ろうかなあ」



 彼が隣に帰ってきた時、私は私が作ったご飯をおすそ分けするのがなんとなくお決まりになっていた。
 今回おとなりさんがサッカーを頑張って隣の部屋を空けている間、彼が好きそうなメニューのレシピを集めていた。どれにしようかな。考えるだけでニヤけてしまう。

 一人暮らしのワンルーム。壁際に置いたベッドの枕元に座り込むウサギのぬいぐるみを手に取って話しかける。



 
 「今シーズン、結構疲れてそうだったしスープ系のが食べやすいかなあ」




 長い耳にリボンを結んだふわふわのウサギ。

 これはいつかのおすそ分けのお返しに、おとなりさんが贈ってくれたものだ。

 「これを俺だと思って」なんて冗談を言うから、私はこんな簡単に本気にして、毎日これに話しかけている。

 



 「実家から贈ってもらったお野菜があるし、シチューにしようかな」




 
  ……もし仮に、彼を守る私の力が及ばず、おとなりさんが誰かをあの部屋に入れてしまったら。




 その時は…




 その時は、彼を諦める。
 そう決めている。


 だから、私は今日もとなりにいる彼をだいじにだいじに守っている。…自分の気持ちと一緒に。

 

 ぎゅ、とぬいぐるみを抱きしめる。




 『まっててね。夕飯の時間に渡しに行くから』














 
 





 「わあい。アガる。楽しみぃ〜」

 いつもとなりにいる彼女は、答える俺の声を当たり前に無視して、それからばたばたと足音が遠ざかった。










「おとなりさん」fin

元のかたちも忘れてしまって 【糸師凛】※リクエスト→←・



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設定タグ:ブルーロック , 短編集   
作品ジャンル:アニメ
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- いつも素敵なお話ありがとうございます!リクエストなんですが、糸師冴さんで男主くんの話を書いて欲しいです。暗い話で冴さんがヤンデレな感じで。注文が多いですがよろしくお願いします! (8月6日 20時) (レス) id: 539b005b10 (このIDを非表示/違反報告)
りりあ(プロフ) - 加糖雪さん» 素敵なお話ありがとうございます!! (8月2日 12時) (レス) @page37 id: e7fc63ae3c (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - りりあさん» りりあ様こんにちは。リクエストいただいていた内容の作品を追加させていただきました!リクエストありがとうございました〜! (8月2日 8時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - 汰稀さん» なんと!素敵な夢をみていらっしゃる…!リクエストありがとうございます。お待たせしてしまうかもしれませんが承りましたのでしばらくお待ちください…! (7月30日 2時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - 汰稀さん» 返信遅くなってすみません!そうですね、束縛、独占欲の表現として三つ編みを用いていました(*˘︶˘*)ただ蘭世本人は無自覚かな?と思ったり思わなかったり…色々考えながら読んでいただけると嬉しいです^^ (7月30日 2時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:星藍 海 | 作成日時:2023年7月19日 3時

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