81 「…じゃあその、“愛する忍たま”のお願いを聞いてくれよ、天女様」 ページ5
首の力が抜けて、支えの無くなった頭ががくんと落ちたかと思えば、次の瞬間Aは五年生たちの拘束を振りほどいていた。
するりと逃げる動きに追いつけないまま、床に転がる5人からは「なっ……?!「え……?!」と掠れた声がする。
5人の輪から抜け出し、ふふ、と微笑みながら彼らを振り返ったAは、
「私に触れるほど距離を詰めて好意を示してくださるのは大変光栄なのですが、その苦無は危険ですので仕舞っていただけないでしょうか?」
はだけた寝間着がたった今眠りから覚めたところかと思わせるほど、悠然としていた。
障子を背にした彼は、漏れ出す月明かりにぼんやりと逆光で照らされてどこか綺麗だった。
思い出したように雷蔵が口を開き、
「妖術に、」
「…かかったのか……?!」
続かない言葉を三郎が声にする。
その疑問に、Aは笑みで返すだけだった。
代わりに挨拶を口にする。
「改めて、五年生の皆さんはじめまして。Aと申します。まずは皆さんのお名前を伺っても?」
立ち上がりながら、三郎は低く吐き捨てる。
「そんなの必要ないだろ」
全員がAに対して攻撃態勢を整え始めた。
「おや。愛する忍たまの皆様のことは沢山知りたいのですが。残念ですね」
「…じゃあその、“愛する忍たま”のお願いを聞いてくれよ、天女様」
困ったように、懇願するように、八左ヱ門が声を絞り出す。
「ええ。是非お聞きしましょう。ですが…私の死は叶えて差し上げることが出来ませんよ」
わざわざ断りを入れてくる天女サマに、5人は苛立ちを覚える。分かっているくせに、と。
「ああそれと、私のことはどうぞAとお呼びください」
「……作戦変更だ」
苦無を得意武器の寸鉄に持ち替えながら、兵助は仲間にだけ聞こえるように小さく囁く。
しかし聞こえていたのか、はたまた察したのか、Aは困ったように首を傾げた。
「おや……そんなに私の死をお望みですか」
「絶対にここで終わらせる」
勘右衛門の決意を固めたような声を聞いて、(さて、どうするか…)Aは悩む。
忍者のたまご相手に果たして自分は命を守れるだろうか。
見れば、それぞれが見たこともない、しかし見るからに危険な匂いのする武器を持って構えている。
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加糖雪(プロフ) - まんじゅうDXさん» こちらにもコメントありがとうございます…!ようやく五年生と絡ませることができました…!こちらこそここまで読んでいただけて嬉しいです。ありがとうございます! (2022年11月28日 17時) (レス) @page7 id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
まんじゅうDX - 続編 おめでとうございます!! 5年生との絡み…最高ですねッ!! ここまで続けてくれて、本当にありがとうございます…! (2022年11月26日 18時) (レス) id: 8f3d0eca03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2022年11月25日 19時