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「……」
予想外の言葉に、思考停止した。
(確かに、皮肉った部分はある、けど…この子は何をどこまで知って…?)
「お礼をしにきたのに、結局倒れてここで面倒見てもらってますよね」
喜八郎くんは表情を変えないまま冷たく言った。
(…良かった。死のうとしてることは多分バレてない)
「生きたくない自分をわざわざ助けた保健委員の顔を死ぬ前に見に来た」というところじゃなく、「お礼を言いに来たはずなのに逆に迷惑をかけている」というところをこの子は言っている。
(……けどそれは本当にその通りだし、私自身ずっとそのことで心が痛い)
「……迷惑とか考えないんですか?」
「…そうだね。倒れたくて倒れたわけじゃないし、それ以上の迷惑はできるだけかけたくないと思ってるよ。
だから今、せめて恩返しがしたくて、委員会の手伝いをさせてもらってる」
喜八郎くんは怪訝そうな顔をした。
「本当にお礼をしに来たんですか?」
「そう、だったんだけどね」
もとより学園のお世話になるつもりはなかったけれど。
最期に自分をご丁寧に生かしてくれた伊作にお礼と称して文句を言うつもりであったのだから間違いない。
「だった、とは」
喜八郎くんは初めて表情を少し変えた。むっとしたように眉を眉間に寄せる。
「…私が忍術学園に来たのも、お世話になってるのも、原因を辿れば全部私を助けた保健委員会委員長のせい」
そもそも手当てをされなければここに来ることもなかった。
私を手当てしたのが彼だったから、一度顔を見ておこうとわざわざこの場所に足を運んだというだけだ。
手当てをしたのが違う誰かだったら、それが誰かを知ることができなければ、もっと違う未来を選んでいただろう。
「なんて、それじゃ責任転嫁だよね。結局は自分の意思で決めてここまで来たんだし…」
頭上からふう、とため息のような吐息が聞こえた。
「…まあ僕はそこら辺のことはなんでもいいんですけど」
「…え?」
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加糖雪(プロフ) - 犬さん» コメントありがとうございます。お待たしてしまって申し訳ありません…また少しずつ更新していけたらと思うのでよろしくお願い致します! (2022年11月6日 0時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
犬(プロフ) - このお話の続きが楽しみです。更新楽しみにしてます。 (2022年3月24日 8時) (レス) @page27 id: f57686b26e (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - レン。さん» レン。さんコメントありがとうございます。学園の人達と関わっていく中で、夢主がどう変わってどういう選択をしていくのか見届けていただけると幸いです。今後もこの作品をよろしくお願いします…! (2022年1月16日 18時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - れなさん» れなさんコメントありがとうございます。感想をいただけてとても嬉しいです。ゆっくりとですが更新再開してますのでどうぞよろしくお願いします( ᵕᴗᵕ ) (2022年1月16日 18時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
レン。(プロフ) - これからの夢主ちゃんがどうなるのか気になります!!気長に更新待ってます! (2022年1月16日 4時) (レス) id: 6501380a5e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年7月25日 4時