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不運とはいえ伊作さんの怪我は幸いにも軽く、手当てを済ませるとぞろぞろと医務室を後にした。
「Aさん、ありがとうございました」
「ううん。どういたしまして」
部屋から出る時、乱太郎くんはきちんとお辞儀までしたので少し慌てる。
そんな大したことはしてないはずだ。
「忍術学園に居候してる間は落とし穴に気をつけてくださいねえ」
後ろから同じく部屋を出ようとしている喜八郎くんから声をかけられる。
「それはお前が落とし穴を掘るのを控えればいいだけだろう」
喜八郎くんと並んで歩く滝夜叉丸くんははあ、とため息をついた。
前の方を歩いていた仙蔵さんが少し振り返って肩越しに、
「そうだ。あんまり人の通るところにはやめておけ」
「……はあい」
目は合わせずとも返事をした喜八郎くんに、仙蔵さんは「よし」と優しげに笑った。
(……あの人、あんな風に笑えるんだ)
こう言ってはなんだが、悪意のあるような……怪しさを含む笑みしか見たことがなくて、私にとってはそれが新鮮だった。
皆それぞれの方向に別れて歩き出していき、私は一人で自分の部屋まで戻った。
気がつくともうすぐ夕食の時間だ。
今日のことで外をぶらつくのもそれなりに危険だということが分かったし、あとはもう自分の部屋で大人しくしていようと思う。
そう自分で考えて頷いてみながら障子を開ける。
「やあ」
「……」
すぐさま無言で開けた障子を閉めた。
自分の部屋の真ん中で、人が正座していた。
そして待ち構えていたかのようにこちらを見て声をかけてきた。
私は見間違いじゃないことを確認するためにもう一度障子を恐る恐る開く。
「ひどいじゃないか。見なかったことにしないでおくれよ」
「……勝手に部屋に上がり込んでる方もどうかと…」
「お、言うねえ」
正座したまま楽しそうに笑うのは、タソガレドキ忍軍組頭の雑渡さんだった。
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加糖雪(プロフ) - 犬さん» コメントありがとうございます。お待たしてしまって申し訳ありません…また少しずつ更新していけたらと思うのでよろしくお願い致します! (2022年11月6日 0時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
犬(プロフ) - このお話の続きが楽しみです。更新楽しみにしてます。 (2022年3月24日 8時) (レス) @page27 id: f57686b26e (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - レン。さん» レン。さんコメントありがとうございます。学園の人達と関わっていく中で、夢主がどう変わってどういう選択をしていくのか見届けていただけると幸いです。今後もこの作品をよろしくお願いします…! (2022年1月16日 18時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - れなさん» れなさんコメントありがとうございます。感想をいただけてとても嬉しいです。ゆっくりとですが更新再開してますのでどうぞよろしくお願いします( ᵕᴗᵕ ) (2022年1月16日 18時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
レン。(プロフ) - これからの夢主ちゃんがどうなるのか気になります!!気長に更新待ってます! (2022年1月16日 4時) (レス) id: 6501380a5e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年7月25日 4時