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留三郎さんに落とし穴から引き上げてもらって最初に見えたのは…
「い、伊作さん?!」
顔面にくっきり赤くボールの跡がついた顔の伊作さんが仰向けに伸びている姿だった。
―
「あはは…Aちゃんを助けようとしたけど、まさか顔にボールが当たるとは…」
伊作さんは不運だ、と笑った。
水で濡らした布を顔にあてながら。
私が乱太郎くんを助けようとし、それをまた伊作さんが助けようと咄嗟に突き飛ばしたが、私は落とし穴に、伊作さんは顔でボールを受け止めることになってしまったのだった。
ボールが当たって倒れた伊作さんを留三郎さんと文次郎さんが医務室まで運び、念の為と乱太郎くんと私も一緒に来ていた。
伊作さんと向かい合うように座る留三郎さんは困ったように笑う。
「まあ、そうかもな。いつものことと言えばそうかもしれん…」
「やり方が少々強引だったけどな」
留三郎さんの隣の文次郎さんは苦笑した。
「にしても、Aはとんだ巻き込まれ不運だったな」
壁にもたれて立つ仙蔵さんは腕組みをして、笑いながら私を見下ろす。
「…巻き込まれ、ですか」
「綺麗な落ち方だったよな!」
と、小平太さん。
続けて長次さんも「…もそ」と僅かに頷く。
「まさか二回も落ちてくれるとは思ってなかったですよ」
「喜八郎!」
飄々とした佇まいを崩さない喜八郎くんと、それが落ち着かなさそうな滝夜叉丸くん。
結局全員で医務室にやって来ていた。
上級生の忍たま、それもほとんどが六年生だからか、保健委員全員と医務室にいる時よりも部屋が狭く感じる。
「Aちゃん、本当にごめんね…」
改めて申し訳なさそうに言われる。
「いえ、巻き込まれとはいえ私と乱太郎くんに怪我はありませんでしたし…私の方こそ……その、伊作さんの怪我の方が心配です」
「怪我って言っても僕はこれくらいいつものことだから…」
彼は頭をかいてはは、と笑う。
やっぱり、そうだ。
伊作さんは私のことが心配と言うけれど、私の方もなんとなく、この不運な彼が心配なのだ。
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加糖雪(プロフ) - 犬さん» コメントありがとうございます。お待たしてしまって申し訳ありません…また少しずつ更新していけたらと思うのでよろしくお願い致します! (2022年11月6日 0時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
犬(プロフ) - このお話の続きが楽しみです。更新楽しみにしてます。 (2022年3月24日 8時) (レス) @page27 id: f57686b26e (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - レン。さん» レン。さんコメントありがとうございます。学園の人達と関わっていく中で、夢主がどう変わってどういう選択をしていくのか見届けていただけると幸いです。今後もこの作品をよろしくお願いします…! (2022年1月16日 18時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - れなさん» れなさんコメントありがとうございます。感想をいただけてとても嬉しいです。ゆっくりとですが更新再開してますのでどうぞよろしくお願いします( ᵕᴗᵕ ) (2022年1月16日 18時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
レン。(プロフ) - これからの夢主ちゃんがどうなるのか気になります!!気長に更新待ってます! (2022年1月16日 4時) (レス) id: 6501380a5e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年7月25日 4時