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「うん、大丈夫だよ」
すると乱太郎くんは軽く首を横に振り、
「お尻から、しかも私を抱えたまま落ちたので、どこか傷みがあってもおかしくないんじゃないかと」
「そうなの?」
「…って、伊作先輩がそう言っていたんですけど。私もやっぱり心配で」
「ありがとう。でも、本当にどこも痛くなんてないから」
「本当に…?」
「本当だよ」
私はしっかりと頷いて見せた。
「乱太郎くんが怪我しなくて良かったし、私なんかより伊作さんの方が…」
その時また強く風が吹いて、包帯が強く伸びた。
「わ……!」
声を漏らす乱太郎くんがギュッと目を瞑ったのが見えた。
回収せず残っていたいくつかのうちのひとつがそのまま風にさらわれて、
「あっ、」
それを掴もうと手を伸ばすが、僅かに反応が遅く空回ってしまう。
「あああ〜!?」
乱太郎くんが声を上げ、高く遠くに飛ばされていく1枚の包帯を二人で見上げた。
太陽が少し眩しい。
このまま高く昇ったら空の雲と包帯の色の境目が分からなくなるんじゃないかと考えが過ぎったところで、包帯は少し遠くの鐘楼の屋根の部分に引っかかった。
「ひ、引っかかった…?!どうしよう〜?!」
乱太郎くんが目をぱちくりさせる横で、紛失する事態にならなかったことに少しだけ安堵する。
(とりあえず風も止んだし、包帯は引っかかった…けど次に風が吹いたらどこに行くか分からない、よね)
「乱太郎くん、あの鐘楼って登れるかな?」
私は包帯を上手い具合に引っかけた鐘楼の方を指さした。
「え?」
「あれって、いつも授業の始めや終わりに鳴ってる鐘だよね。鳴らす人が登れるようになってると思ったんだけど…」
「そうです、登れるようになってます。けどそれがどうかして…」
「私、登って取ってくるよ」
「えっ」
「鐘のところ、柵から身を乗り出せば垂れてる包帯の端が掴めそうだし」
「えっ?!」
「乱太郎くんはまだ残ってる包帯をお願い」
「あ、危ないですよ…!」
「私高いところ平気だから、大丈夫」
不安げに私を見上げる乱太郎くんの頭を、ついぽんと撫でる。
(あ…これも利吉さんの時と同じ、“癖”だ)
鐘楼はその後ろに塞がる塀より倍くらい高く、青空に向かって伸びている。
私は駆け足で鐘楼の根元の入口へとまわった。
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加糖雪(プロフ) - 犬さん» コメントありがとうございます。お待たしてしまって申し訳ありません…また少しずつ更新していけたらと思うのでよろしくお願い致します! (2022年11月6日 0時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
犬(プロフ) - このお話の続きが楽しみです。更新楽しみにしてます。 (2022年3月24日 8時) (レス) @page27 id: f57686b26e (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - レン。さん» レン。さんコメントありがとうございます。学園の人達と関わっていく中で、夢主がどう変わってどういう選択をしていくのか見届けていただけると幸いです。今後もこの作品をよろしくお願いします…! (2022年1月16日 18時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - れなさん» れなさんコメントありがとうございます。感想をいただけてとても嬉しいです。ゆっくりとですが更新再開してますのでどうぞよろしくお願いします( ᵕᴗᵕ ) (2022年1月16日 18時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
レン。(プロフ) - これからの夢主ちゃんがどうなるのか気になります!!気長に更新待ってます! (2022年1月16日 4時) (レス) id: 6501380a5e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年7月25日 4時