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「それで、考えは変わったか?仙蔵」
Aのことについての話で集まってもらった六年生の場が解散となった後、部屋には文次郎と仙蔵の2人きりだった。
腕を組んだまま、文次郎は仙蔵の様子を伺うように問いかけた。
仙蔵は文次郎の方を見ず、机の上で次の授業に向けて本を捲っている。
「変わるもなにも。あいつはただの村娘。忍術学園が危険に晒される可能性は無くなったんだ。もう放っておくさ」
「…そうか」
「……こんな世の中だ。あんな風にして突然全てを失う者は珍しくない」
「行くあてがないからとここで面倒を見るのは…戦の蔓延る世界でそんなことをしていたらキリがないってことだな。俺もそう思う部分は確かにある」
「もっと厳しいことを言ってしまえば、命を自ら捨てることは理由はどうあれ褒められたことじゃないな。その人の勝手にすれば良い」
仙蔵は俯き、一呼吸だけ置いた。
「けどな、だからこそ助けるべきでもある」
「ああ」
「きっとアイツが忍術学園に来たのも何かの運命なんだろう」
「そうだな」
「私たちは…忍びだ。それは人の命を、時には仲間の命を、級友の命さえも厭わないということ。
しかしその刃の下には心を忍ばせている。
私も、人の心が無いわけじゃない」
仙蔵は本を捲る手を止め、文次郎を見た。
文次郎は仕方なさそうに笑う仙蔵と目を合わせる。
「要するに、同じ気持ちってことだな。仙蔵」
「そういうことだ。
こんな平和な学園で、いや、忍術学園でだからこそ、私たちは“心”を教わり、学んで、忍びである前に人であるように居られているんだ」
「ああ。尤もだ」
文次郎は満足そうに、確かめるようにして笑った。
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ゆっちー(プロフ) - 加糖雪さん» フォロバありがとうございます!こちらこそよろしくお願いします!無理のない範囲で更新頑張ってくださいね!応援しております、、! (2021年7月12日 1時) (レス) id: 075c250024 (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - ゆっちーさん» ゆっちーさんコメントありがとうございます!長々と続いてしまっていますが楽しんで頂けてとても嬉しいです´ `*Twitterのフォローもありがとうございます!フォロバさせていただいたんですが、間違いがないか確認して頂けたら幸いです汗 今後もよろしくお願いします…! (2021年7月11日 23時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっちー(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいてます!伊作先輩と食満先輩が好きすぎてもう辛い、、、夢主ちゃんの感じもどストライクで見ててもう楽しすぎます!これからも頑張ってくださいね!そして勝手ながらTwitterフォローさせていただきました、、、! (2021年7月11日 6時) (レス) id: 075c250024 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年7月2日 0時