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けどそれは、所詮伊作の願望だ。
「現実的なところを考えると、忍術学園に留めるよう動いていた先生達の作戦が上手くいって、忍術学園をすぐに出るのを諦めただけかもしれないけど」
委員会の手伝いは、優しい彼女の選んだ不安を紛らわす手段。
でもそうなれば、その分死にたい気持ちを持ち続けるのは辛いはずだ。
衝動的に死ねない。考え直すタイミングも時間も沢山ある。
「僕は、Aちゃんが決めた道を引き返せるようにしたい。委員会の手伝いに来てくれるのもチャンスだと思っている」
「…伊作は、初めからずっと分かって…」
留三郎がやっとの思いで声を出した。
あのか弱い少女が抱えたものに自分は何も気がつかないまま、今までずっと。
けれど、それを知っても思いは変わらなかった。
(…俺も、俺に出来ることがあればできる限りのことをしたい)
「…なるほどな」
説明を聞いて、仙蔵は頷いた。
文次郎、長次、小平太も、顔を見合わせて頷く。
全員が伊作の話に納得した様だ。
「…今話したことは誰にも言ってない。皆も、今話したことはここだけの秘密にして欲しい」
「……分かった」
代表して、真剣な声音で文次郎が答えた。
その場の全員も視線で了承したことを示す。
「先生方が私たちに何も言わずに動いていたのも、話したところで相手がどうしていいか分からなくなるだけだからだ。
僕もそう思ってたから、自分の知っていることを誰にも言わなかった。
でも、そのせいで疑われて危険な目に遭うのは違う。だから皆に話した」
伊作のその言葉は、全員に向けて言っているようで何故だか仙蔵の方を向いている様だ。
「Aちゃんも、自分の目的を知られていると分かったら今度こそ本当にいなくなるかもしれない。
…今はただAちゃんのそばにいることしかできないんだ」
こうして、六年生内での少女への疑いは晴れた。
具体的な解決方法は見出せなくて、もどかしい気持ちもあったが仕方がない。
伊作の言う通り、近くにいることしかできないのだ。
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ゆっちー(プロフ) - 加糖雪さん» フォロバありがとうございます!こちらこそよろしくお願いします!無理のない範囲で更新頑張ってくださいね!応援しております、、! (2021年7月12日 1時) (レス) id: 075c250024 (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - ゆっちーさん» ゆっちーさんコメントありがとうございます!長々と続いてしまっていますが楽しんで頂けてとても嬉しいです´ `*Twitterのフォローもありがとうございます!フォロバさせていただいたんですが、間違いがないか確認して頂けたら幸いです汗 今後もよろしくお願いします…! (2021年7月11日 23時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっちー(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいてます!伊作先輩と食満先輩が好きすぎてもう辛い、、、夢主ちゃんの感じもどストライクで見ててもう楽しすぎます!これからも頑張ってくださいね!そして勝手ながらTwitterフォローさせていただきました、、、! (2021年7月11日 6時) (レス) id: 075c250024 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年7月2日 0時