6-3 町へ行こう ページ32
「僕も荷物持とうか?」
「悪いよ。頼まれたのは俺だし」
「いや、持つ。持たせて」
伊作はAの片手から荷物を取る。
案外抵抗せず、するりと伊作の手に渡った。
お礼で町で買い物してもらうとはいえ、Aに一方的に何かを与えられてばかりじゃ伊作は落ち着かないのだった。
「やだ、今日の伊作積極的…ときめいちゃう…」
「ときめかなくていい!」
「マジな話していい?」
「何?」
「冷静に考えてどんなに小さなことでも俺に恩を売ったらベッタリ溺愛三昧で返されると思わない?」
「…それがどうかした?」
「え」
「え?」
「はーん。いいのかなそんな返し方をしちゃって。ふーん。嫌がらないんだ。へーえ。嫌じゃないんだ。ほーん」
「嫌がられるのに慣れすぎた悲しい結果がこれか…」
「それなら遠慮なくいっちゃいますけど?」
するりと慣れた手つきでAの手が伊作の手に重ね合わせられ、指と指が隙間なく絡んでぎゅっと握られる。
「!」
いわゆる恋人繋ぎだ。
お互いの体温が相手の体にじんわり滲み出す。
「伊作が荷物持ってくれたおかげで手が空いたからね。それにこうしてればつまづいて転ぶとか、鳥のフンが落ちてくるとか矢が飛んでくるとか、多少の不運くらいは防ぐのが簡単になる。一石二鳥一石二鳥」
「女の子相手に出来たらモテるだろうに…」
「なんて?」
「いいや、なんでもないよ」
Aに繋がれるまま、しかし伊作もやんわりその手を握り返しながら目的地へと歩いていく。
「ふんふふ〜〜ん」
Aの鼻歌はさらに軽快になる。
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加糖雪(プロフ) - 乃花おむ子さん» 乃花おむ子さんこちらにもコメントくださりありがとうございます!ギャグに自信ないのですが笑っていただけて嬉しいです〜!こちらの作品はかなりゆっくりの更新になりますがよろしくお願いいたしますm(_ _)m (2021年9月25日 18時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
乃花おむ子(プロフ) - めちゃめちゃ面白くて笑いながら読んでしまいました……!無理のない程度に更新頑張ってください! (2021年9月24日 7時) (レス) @page27 id: 3538425ae0 (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - まーぶりんさん» まーぶりんさんコメントありがとうございます!楽しんで頂けている様で何よりです…!応援ありがとうございます。今後も何卒よろしくお願いいたします! (2021年5月21日 20時) (レス) id: 22bc115167 (このIDを非表示/違反報告)
まーぶりん(プロフ) - ウッ…凄く好きです…!!ホント主様の文才が神すぎて…!更新楽しみにしてます( ゚д゚)頑張ってくださいー!! (2021年5月20日 17時) (レス) id: 045921842f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年5月12日 22時