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雑渡さんは私を連れ去った時と同じく、私の部屋のすぐ近くの廊下に到着して、そこで私の身体を降ろした。




「ありがとうございました」

私は雑渡さんに礼をする。



「じゃあ、またね」

「…はい。お団子ご馳走様でした」




雑渡さんはにこやかに笑って、そして目にも止まらぬ早さで去っていく。



その背中が一瞬で見えなくなるのを見届けながら、私は雑渡さんの言葉を頭で反芻して、


(…?“また”ね……?)




「Aちゃん!」

「伊作さん」

声のした方を見れば、伊作さんがこちらに駆け寄ってくるところだった。




「良かった、戻ってきて…!ランチの時間直前になっても戻らないから心配したよ。疲れてない?体調は?」

「だ、大丈夫ですから…」

「本当?我慢してない?」

「…してないですよ。心配しすぎです」

「それなら良いんだけど…

もう、雑渡さん勝手なんだから…Aちゃんが居なくなったのが誰にも何も気づかれなかったから良かったけど、忍術学園の人相手に内緒にしててっていうのは難題だよ…」


「…伊作さん、それより肩、離してください」

「え」



私の両肩を掴んで矢継ぎ早に喋った伊作さんは、私の言葉で気がついたみたいだった。



「ご、ごめん!つい…」



少し顔を赤くしながら、伊作さんはばっと私の肩から手を離す。




「ところで、雑渡さんは?」
「さっき立ち去って行ったばかりです」
「そっか。…Aちゃんに用事って、何だったの?」

「……団子」
「団子?」

「団子を食べさせられました。三色団子を一串」
「え、…え?いや、Aちゃんは栄養失調の治療中だからそういうのは事前に保健委員長の僕か新野先生に確認を……って違う、雑渡さんと?」


私は目を瞬かせる伊作さんに、頷いて見せる。



本当のところはどうだったのか、どう説明していいかもわからなければ、説明しきれる気がしなくて私は誤魔化した。

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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年4月25日 20時

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