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たとえ自分自身がそう感じなくとも、結果として倒れてしまったら意味が無い。
「ありがとうございます伊作さん」
普段なら山本さんと一緒に食事をとるところだが、用事なら仕方がない。
二人でいても特に盛り上がるような会話はしてこなかったし、一人でも変わりはないか。
私は伊作さんからお盆を受け取ろうと手を伸ばす。
「!Aちゃん、手が」
急に真面目な顔になった伊作さんは私の差し出した手を見た。
「手?」
自分の手を見てみる。
「血が…」
伊作さんの言う通り、私の包帯を巻いていない左手の指先には血が滲んでいる。
自分の目の前に左手を持ってきてよく見ると、人差し指と中指が1箇所ずつ細く切れていた。
(さっき本を落としたときにか……気が付かなかった)
紙で切ったにしては深いのか、真っ直ぐな傷口から滲んだ血は豆粒より一回り小さく、指の上に丸く溜まっている。
「手当するよ。見せて」
「ああ、これくらい平気ですよ」
紙で指を切った時って少しぴりぴりするような気がするが、運が良く今の私は本当に何も感じない。
文字通り痛くも痒くもなかった。
その指を折り曲げてみても違和感はない。
「ちょ、曲げないで…!平気って言うけど良くないよ。これ向こうの机に置いていい?」
「え、」
「入るね」
伊作さんは私を半ば押し退けるようにして部屋に入ると、机にお盆を置いてまた部屋を出た。
「そのまま!そのままで待ってて!」
「伊作さん…?!」
そして走ってどこかへ行ってしまった。
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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年4月25日 20時