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「お邪魔するぞ！」
「え、あの…っ？！」
そのまま学園長さんは、部屋の入り口に立つ私を気にもとめず部屋の中に入り込んできた。
その後ろを着いてヘムヘムも部屋の中へと入る。
「よっこらせ」と部屋の真ん中で正座した学園長さんを驚いたまま見ていると、
「まあとにかく座りなさい」
優しく手招きされた。
(…ここ、一応私の部屋のはずなんだけどな……いや、建物自体は学園長さんのものだから間違ってはない、のか…？)
言われるがままに障子をすっと閉めて、学園長さんとその隣に正座しているのに向かい合って、私も座った。
本当は気が引けるけれど、包帯を巻いているから仕方なく脚を崩して。
「先程、お主の書いた文を届けるよう頼んでいた者が学園に戻ってきた」
「…！」
早速話し始める学園長さんのその言葉に、私は悟られないようにしながら身構える。
(今から聞く話によっては、私は…)
「その文なのじゃが、宛先にあった村と人が見当たらなかったらしく届けられなかったみたいでの…」
思っていた通りになった。
そりゃあそうだ。架空の村の名前と人の名前を教えていたのだから。
その村は人目につかないところにあって、とあらかじめ用意していた言い訳をしようとして、けれど私が口を開くより先に学園長さんが続ける。
「本当は帰る場所なんてないんじゃろ」
「え？」
そのふたつの目に真っ直ぐ見つめられて、私は動けなくなった。
あからさまに身体が強ばるのを感じる。
「ど、ういう意味、ですか…」
「お主には何か事情があるとみた。それが何かは聞かないでおこう」
わけがわからなかった。
しかし学園長さんはそのまま続ける。
「文が届けられなかったということはお主とわしとヘムヘムだけの秘密にする。
その代わり、ちゃんとお主の身体が治るまでこの忍術学園に居ること」
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作者名：加糖 雪 | 作成日時：2021年4月25日 20時
