7 ページ3
「…Aです」
自分の名前だけ言って、軽く会釈をすると、向こうの3人も会釈し返してくれた。
「よし、じゃあ団子を食べよう」
雑渡さんはさっきまでと同じように私の隣に脚を揃えて座り、それに倣って部下3人も隣の枝に腰掛ける。
私の隣の雑渡さんはなんだかウキウキしながら、部下たちから受け取ったばかりの包みを開けた。
中には三色団子が五本、重ねて山になっている。
雑渡さんは片手で団子を2本手に取ると、「向こうに回して」と残りを包みごと私に寄越してきた。
言われたままに、幹を挟んで隣に座る尊奈門さんに私は包みを手渡す。
「ありがとう」
「…いえ」
尊奈門さんにお礼を言われて、その言葉があまりに純粋だったからか、私は思わず目を伏せてしまった。
3人の「いただきまーす」という声が聞こえたところでそちらを見やると、口元の布を外して美味しそうに団子を頬張ってる様子が見えた。
(忍術学園の保健委員みたいだ…)
どことなくあどけなくて無邪気な姿が、彼らとはかなり歳の離れている子達と重なる。
「Aちゃん」
不意に隣から優しい声で名前を呼ばれ、振り返る。
「あーん」
と、そこには、私に団子を口元に近づけて食べさせようとする雑渡さんがいた。
「…私が病人に見えますか」
その姿を見て思い出したのは、私が忍術学園を訪れて初日の夜、伊作さんが私に雑炊を食べさせてくれた時のことだった。
まだ実際病人のような所もあるだろうが、しっかり動けている点において病人と呼ぶには物足りないだろう。
「つれないねえ。からかっただけ。これ、君の分だから」
悪びれる様子もなく、そのまま雑渡さんは私に団子を差し出して持たせようとする。
「…」
私は少しの間団子を見つめた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 90人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：加糖 雪 | 作成日時：2021年4月25日 20時
