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山本さんが私の部屋に昼食を持ってきたのは、私が雑渡さんに突然連れ去られ、無事に忍術学園の私が借りている部屋に戻った直後。
本当に直後だった。
まだ全然お腹が空いていなかったけど、山本さんに心配をかけるものかと気合いで完食した。
早くここを出る為に周りには元気な姿を見せておきたいという、私自身の為でもある。
山本さんが空の食器の乗ったお盆を持って部屋を出ていくと、私は敷かれた布団の上に横になった。
体力的な疲れではなく、気疲れしているような気がする。
なんだかこのまま昼寝ができてしまいそうだ。
しかし私は眠ろうとはせずに、先程の4つ折りの紙切れを取り出して寝転がったままそれを見つめた。
紙を開いて見える雑渡さんの文字と絵。
私は雑渡さんが私を連れて忍術学園に戻る道中、つまり木々を飛び移りながらしていた話を思い出していた。＿＿＿＿
＿＿＿
「そういえばさ、忍術学園からの文を届けようとしている人を君の村の辺りで見たんだけど」
「…！」
ふと思い出したように、私を横抱きにしたまま飛んで走る雑渡さんは言った。
それはきっと、私が出した文のことだ。
「宛先に書かれている場所がなかなか見つからないのか、その人だいぶ困っていたよ…
Aちゃん、心当たりない？」
「……ない、ですけど…」
「…そう。それでなんだけど、実はその文が君がこれから住む家に宛てたものというのは調べがついているんだ」
平然とそう言う雑渡さんに私はつい、
「…どうして調べてあるんですか…」
「さて何故でしょう」
雑渡さんはふざけたように笑う。
「それよりも、…君の書いたその文の宛先は、本当にあるのかな？」
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作者名：加糖 雪 | 作成日時：2021年4月25日 20時
