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雑渡昆奈門がその少女を初めて見たのは、伊作の臨時設備した救護所だった。
昆奈門と伊作とは関わりがあり顔見知りであったものの、その村の奇襲の件で2人が会うことは無かった。
正確には、昆奈門が一方的に、伊作が救護所でせわしなくけが人の手当をしているのを木の影に隠れて見ていただけ。
昆奈門は、手当てされた人たちのために動けるよう、しばらくの間影から救護所を見張っていた。
様子を見ては部下に救護所へ食糧や包帯を少しではあったが届けるよう指示を出す。
もちろん、タソガレドキからであることは村人を不安にさせない為にも伏せ、伊作を通して忍術学園からということにした。
そして、手当されたが帰る場所のない人たちを、そういう人が住まえる場所へとできる限り、これも部下を通じて導いた。
伊作が手当した中のひとりと、そういう認識でしかなかったその少女の様子がおかしいと昆奈門が気づいたのは、彼女が救護所を出た時だった。
けが人の手当てを終え、伊作が救護所を離れてしばらくした後。
救護所に残るけが人も少なくなった頃だ。
「自分を引き取ってくれる場所へ向かう」と言って傷だらけのまま、怪我もろくに治っていないのに歩きだした彼女の足元は覚束ない。
何だか彼女は救護所に残った大人の心配を振り切って、急いでいるように見えた。
それに、引き取ってもらうところはどうやって決まったのだろうか。
親戚や血の繋がっている人の家が近くにあるのだろうか。
昆奈門は途中で倒れられても困る、と少女が目的の場所に着くまでこっそり跡をつけることにした。
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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年4月25日 20時