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「…あ」
そういえば、昨日の夜に山本さんに「荷物を箪笥に入れておいたから確認しておいて」と言われていたんだった。
(…考えすぎててもいい案浮かばないよね)
気分転換ということにして、私は立ち上がると箪笥に手を伸ばした。
引き出しが3つあるうちの1番上を開けてみると、中には私がここへ来る時に持っていた風呂敷があった。
特に意味は無いけど念の為、中身の入っている風呂敷を取り出して床に広げてみる。
中にあるのはところどころすすけたり焦げているボロボロの着物と、水汲みに使っていた竹筒、痛み止めを使い切った後に残って正方形に折りたたまれた薬包紙。そして少しの銭。
今の私の全て。
(あーあ…)
それ以上に、何も感想が出てこなかった。
「…薄情、なんだな」
一人きりの部屋で、ぽつりと言葉を落とした。
自分で少し気がついている。
私は村からここに来るまでに、感情をどこかに亡くしてきてしまったのだと。
持ち物に変わりがないことを確認し、それらを再び風呂敷に包むと、元あったように箪笥に入れた。
箪笥の上に、昨日の夜置いてそのままにしていた着物と包帯を見つけたので、それも風呂敷と同じく箪笥の1番上の引き出しの中へ入れる。
救護所からここへ来るまで着ていた着物の方も、裾の方にいけばいくほど土で汚れていて改めて見るとこっちもボロボロだな、と思った。
流石に奇襲のときに着ていた着物ほどではないけれど、着て歩くのには少し躊躇うだろう。
すっ、ぱたん。と引き出しを閉じる。
(さて、少し外に出てみようかな)
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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年4月6日 16時