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お礼を言わなきゃいけないのは私の方なのに。
(迷惑をかけないって決めたのに、これじゃまるでダメだ…)
身体が万全じゃないと、思ったようにいかないことばかりだ。
「よし、じゃあしゅぱ___っわあ?!!?!」
伊作さん自らが先頭に駆け足で部屋を出ようとするが、叫び声に変わる。
今度はなんだ、と顔を上げて伊作さんの方をみれば伊作さんの身体が前につんのめって傾き、持っていたお盆ごと食器が宙に舞っているのが見えた。
「伊作!」
「伊作先輩!」
その時、目の前にいた留三郎さんが私の分のお盆を机に放り投げるように置くと、たちまち視界から消えた。
「!」
一瞬のうちにジャンプをして、宙に舞ったお盆を片手で掴み、着地。
そして落ちてくる食器をお盆でキャッチすると、伊作さんが倒れる前に留三郎さんがもう片方の腕でその身体を支えた。
視界から消えたのは、そのくらい留三郎さんが伊作さんと食器を助けに動いたのが素早かったということだった。
「す、すまない留三郎…」
「気にするな。同室だろう」
しゅんとする伊作さんに、留三郎さんは頼もしく笑った。
「よ、よかったあ…」
乱太郎くんがほっと胸を撫で下ろし、
「すごいスリル〜」
伏木蔵くんはなんだか楽しそう。
「遅刻が迫ってて、さらに何も無いところでつまづいて転びかける…僕たち不運なの忘れてた…」
左近くんが頭を抱える。
「不運…?」
私が小さく呟いたのを、数馬くんが聞き逃さずに答えてくれる。
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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年4月6日 16時