きっと息をやめるまで【RKRN】 (ページ37)

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湯船に浸かって少しすると、身体のあちこちにしみる痛みにもだんだん慣れてくる。

ふと、前に伸ばして眺めていた左腕に乾いてこびり付いた血が見えた。

(まだ血が…)

医務室を出る時、伊作さんに｢血の汚れを落としてきてね｣とも言われていたから、湯船に浸かる前に傷口のあたりを重点的に(しみるのに耐えて)そうっと擦って洗った。
にも関わらず、乾いた血というのはなかなかしつこくて、落としきれてなかったようだ。

指の腹で2、3回擦ると血の汚れは落ちる。

湯船に浸かったまま、ぼうっとする。

(これから、どうなるんだろう…)

突然不安を覚えた。

今まで感じなかった分の不安が、今になって襲ってくるみたいだった。

私はこれからどうすればいい？

急に、涙が溢れてきた。

ここに来るまで泣けなかったのが、今になって感情の制御を全部壊して込み上げる。

喉の当たりがぎゅっと苦しくなって、視界はぼやける。

顔を濡らす涙が頬の火傷の箇所を伝うとしみて痛かった。

拭っても拭っても止まらない涙に、もしかすると自分はずっとこうして泣いてしまいたかったのかもしれないと気がつく。

けれど、村が燃えても、家族を失っても、一人になったまままだ生きている自分に気がついても、泣けなかった薄情な自分がいるのもまた事実だった。

もしも、もっと前にこうして泣くことが出来ていたら、何か変わったのだろうか。

誰かがこの｢どうしようもない｣しかない私を救ってくれただろうか。

助かった村の誰かが、救護所の大人の誰かが、他の町の誰かが。

気がつくと、情けないことに嗚咽を上げて泣いていた。

下唇を噛み締めて、声を押し殺す。