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「伊作の言ってた通りだったな」
留三郎さんは頬杖をついて口の端を上げる。
伊作さんは頷いた。
「Aちゃんの怪我の具合とか、包帯の巻かれ方に見覚えがあったから、多分僕があの時助けた村の人なんじゃないかなって思ってたんだ」
「え?伊作先輩、そんな話私たち聞いてませんよ!」
乱太郎くんが言うのに、他の保健委員の子たちもうんうん、と首を縦に振る。
「ご、ごめんね?確信があったわけじゃなかったから、Aちゃん本人に確認ができるまで言わないでおこうと思ってたんだ」
「食満先輩は知ってたんですか」
乱太郎くんは留三郎さんの方へ視線を向ける。
「ん?ああ、俺は今日学園長先生に集められた時に…」
学園長先生 というワードに、自分のことがかなり大事になっているのだと私は身を縮こまらせた。
でも、まあ人が倒れてて、その人を学園の中に入れるとなれば大事にもなってしまうか…。
こんなことになるはずじゃなかった。
私が伊作さんに改めてお礼の言葉を、と思って口を開きかけた時、部屋の真ん中に何かが放り込まれた。
「!」
手のひらに乗るくらいの大きさで丸い。
よく見ると導火線があり、その先には火がついている。
(ば、爆弾…?!)
ジジジ、と導火線を燃やす音に私は身構える。
「煙玉か!」
留三郎さんが叫ぶ。
次の瞬間、煙玉は音を立てて破裂した。
全員のうわあ!という声と同時に、一瞬にして部屋は白い煙で埋め尽くされてしまった。
咄嗟に目を瞑り、口と鼻を袖で抑えるが、煙を吸ってしまったのかむせてしまう。
目を開けると、消えかかる煙の中から、白髪おかっぱの小さいおじいちゃんが出てくるのが見えた。
「が、学園長先生?!」
みんなは、その人を見て一斉に声を上げる。
この人が忍術学園の学園長…
そう思いながら、私は喉に何かが沁みたような感覚がして咳が止まらずにいた。
「Aちゃん大丈夫?!」
なんとか咳を抑え込みながら、心配そうな顔で近寄ってきた伊作くんに必死に頷いた。
「……もう、おさまった、と思います…大丈夫です…」
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加糖雪(プロフ) - Hanakoさん» ありがとうございます!^^ (2021年4月25日 21時) (レス) id: ac64387404 (このIDを非表示/違反報告)
Hanako - 面白い!! (2021年4月17日 18時) (レス) id: 1d8bf8714f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年3月31日 9時