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「ああ。変だと思わないか」
「まあ…そうですね。
けがも治っていないのに足を引き摺ってまで学園へ来たことは気になります」
何も食べていないことに関しては、途中で道に迷ったりトラブルがあったとすればありえなくは無いと思いますが、と土井先生は加えた。
山田先生はやはりそうか、と目を伏せる。
「私が医務室に運んだ時に、こっそり彼女の荷物の中身を見たのですが…って!山田先生なんですかその目は!」
先程までの真剣な雰囲気が、「中身を見た」のあたりから土井先生を怪しげに見つめる山田先生の視線で一気に崩れ去る。
「別に変な意味は無いですよ!ただ何かおかしいと思ってたので、万が一暗殺者とかそういう怪しい奴だったらと…!」
「ふうん…」
必死の弁明を微妙に信じていないような山田先生。
土井先生はこほんとひとつ咳払いをして雰囲気を持ち直す。
「それでですね、その中身が着物と銭、水を汲むのに使う竹筒、それから折りたたまれた薬包紙だったことも、なんだか変な気がして…」
「ふむ…村を焼かれていることも踏まえると…」
「でしょう。なんだかまるで、」
持てるものは全て持っているようだった。
まるで、このまま__
捨て身のようだ、と零した土井先生は、目を細めた。
*
庵から出たあと、六年生たちは並んで廊下をぞろぞろと歩いていた。
「伊作はこれから医務室に行くのか」
「うん。後輩たちに任せっきりにできないし、新野先生が戻ったら説明しなきゃいけないし」
留三郎に答えながら、伊作は笑う。
(それに、さっき診たときあの子の包帯が汚れてたから、山本シナ先生が戻ってきたらその交換も頼みたいし…)
伊作は彼女の汚れた包帯を見て交換しようと思ったのだが、服の下まで包帯が巻かれているだろうということが分かり、自分が交換するのはできないなとやめたのだった。
(…妙だな)
歩きながら、仙蔵は口元に手を当てる。
そしてそれから、伊作を見据えて仙蔵は眉をひそめた。
仙蔵も少女のことを何かおかしいと感じていた。
刺客ではないかとも考えたが、あんなボロボロの娘に何ができるだろうと思い直す。
そもそも本人が眠っている状態なら何も出来ないだろう。まだ彼女は敵未満だ。
(学園長先生の言う通り、分からないことを考えたって仕方ない…考えるのは本人が目覚めて事情を聞いたらだ)
*
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加糖雪(プロフ) - Hanakoさん» ありがとうございます!^^ (2021年4月25日 21時) (レス) id: ac64387404 (このIDを非表示/違反報告)
Hanako - 面白い!! (2021年4月17日 18時) (レス) id: 1d8bf8714f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年3月31日 9時