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「うん、呼吸は少し浅いけど安定してるし、気を失っているだけみたいだ。
多分、何日もろくにご飯を食べていなかったんだと思います。
倒れた時のけがも特にないみたいだし、今すぐ命に関わるような状態ではないからこのまま寝かせていて大丈夫です」
伊作の言葉に、その場の教師と六年生たちは安堵する。
「とりあえず、医務室に運びましょう」
伊作は立ち上がった。
「それなら私が」
土井先生はそのまま軽々と少女を横に抱き上げる。
(と言うより、文字通り軽い…)
土井先生はその軽さに少し驚いていた。
先日買い物をしていた時、人混みで転んでいたのを助けた町娘よりも軽かったからだ。
伊作の言う通り、この子は本当にしばらく何も食べていなかったらしい。
「山田先生、この子を医務室に」
「私も行きます!」
土井先生が医務室に向かおうとするところに、伊作も少女のものと思われる転がっていた木の杖を手にして着いていこうとする。
「ああ、あとは任せた」
山田先生は2人を真っ直ぐ見つめた。
「はい、みんな道開けてね〜」
「ごめんね、通るよ」
土井先生と伊作は集まってきた生徒をかき分けて、医務室へ向かう。
それと一緒に、全員が門の中へと入り、小松田は少しの間開けっ放しになっていた門をやっと閉ざした。
「で、あの倒れてたのは誰なんだ?」
小平太の問いには、地面に落ちた筆と入門票を拾い上げた小松田が答えた。
「それが、わからなくって。せめて倒れるのが入門票にサインしてからだったら名前だけでもわかっていたんだけど…」
小松田の手にする入門票には、彼女が倒れる時に筆を滑らせて出来た力ない細い線が1本、ぐにゃぐにゃと蛇行しながら塗られているだけだった。
「誰かの知り合いか?」
小平太は真面目そうな顔で首を傾げた。
「山田先生もこの方が誰かご存知ないのですか」
仙蔵の問いに、山田先生は首を縦に振った。
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加糖雪(プロフ) - Hanakoさん» ありがとうございます!^^ (2021年4月25日 21時) (レス) id: ac64387404 (このIDを非表示/違反報告)
Hanako - 面白い!! (2021年4月17日 18時) (レス) id: 1d8bf8714f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年3月31日 9時