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「六年い組の立花仙蔵か」
束ねた長髪を靡かせながら、彼は軽く会釈をする。
仙蔵は、最上級生である自分なら何か力になれるのではと思い、自ら山田先生に声をかけたのだった。
「これはどういうことですか」
土井先生と山田先生がしゃがみこんで様子を見ていたその傷だらけの少女を見て、仙蔵は眉をひそめた。
「実はかくかくしかじかで…」
「なるほど。」
山田先生の説明に仙蔵は頷く。
「校医の新野先生を呼んで…って、今日は午後までいらっしゃらないのか…」
言いかけて、土井先生は頭を抱えた。
これは至急詳しい人に彼女の状態を見てもらわねばならないという状況なのに、さてどうするか。
そう考えた矢先、「仙蔵、何があったの?」
「良いところに来た。伊作」
「私もいるぞ!」
「小平太も」
同じく六年生である伊作と小平太が、やじ馬ができている所へ通りかかり、どうやら倒れた人が居るらしいと聞いてやってきた。
「この子、診ても良いですか」
伊作は倒れた少女を見ると、真剣な面持ちで歩み寄る。
「ああ、頼む」
山田先生は少女の傍を伊作に譲る。
伊作は横になっている少女に近づきしゃがみこむと、着物の両方の袖をまくる。
右腕から右手にかけては全て包帯でおおわれているのがあらわになった。
左腕にも生傷だらけで、見ている方が痛々しくなる。
包帯で覆われていない左腕の方を伊作は掴んだ。
少女の腕はどこか生気が無くて、そのぬるい体温にまるで死にかけているみたいだと伊作は思えた。
けれど、生気がなくとも、この子は生きている。息をしている。
伊作は掴んだ腕の手首の当たりを握り、そっと戻すと次に首に触れた。
鼻と口に耳を近づけて、呼吸音のペースも確認する。
その様子を、一同は固唾を飲んで見守っていた。
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加糖雪(プロフ) - Hanakoさん» ありがとうございます!^^ (2021年4月25日 21時) (レス) id: ac64387404 (このIDを非表示/違反報告)
Hanako - 面白い!! (2021年4月17日 18時) (レス) id: 1d8bf8714f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年3月31日 9時