きっと息をやめるまで【RKRN】 (ページ31)

今日:7 hit、昨日:10 hit、合計:91,741 hit

4 ページ31

私はなるべく自然に微笑む顔を心がけて、顔を上げる。
ここにいる人たちの顔を順番に見た。

｢私は明日の朝…いや、今夜にでも忍術学園を出ます｣

真剣な顔をして私の話を聞いていたけれど、その言葉に全員が驚いた顔に変わった。

｢え、｣

最初に声を出したのは伊作さんだった。
私を見たまま意味の無い言葉の端切れを零す。

｢保健委員のみなさんもありがとうございました。
新野さんや、私の包帯を巻き直してくれたという方によろしくお伝えください。
それから、食堂のおばちゃんという方にはご飯が美味しかったです、と…｣

｢ま、待って！｣

私を引き止めたのは、伊作さんだった。

｢Aちゃんはまだ身体を休めてないとダメだよ…！しばらく食べてなかったことで身体が弱ってるし、怪我もひどいし…。
それに、村からここまで歩いてきたこともあって疲弊しきってて、今すぐ帰れるような状態じゃ…｣

保健委員の子たちや、留三郎さんも心配そうにこちらを見つめている。
そういえば、顔色が悪いから寝ていた方が良いって言われたばっかりだったな。

私は首を振った。

｢いいんです。…大丈夫ですから｣

｢で、でも…｣

伊作さんの縋るような目に、私は顔を逸らした。

私が断ってもまだ引き下がらない伊作さんは、やはり優しすぎる。

その優しさに、私は生殺しにされてしまったのだ。

｢今から学園を出てもすぐ夜になるぞ。1人で夜道を歩くのは危険だ｣

留三郎さんも、ごもっともな意見をくれる。

｢大丈夫です。気にしないでください｣

しかし、私は譲らない。

｢ううむ。そうじゃな｣

学園長さんは、無理に引き止めるのは悪いから私のことを帰す、と言葉を続けると思った。

が、

｢Aには完全に回復するまで忍術学園にいてもらおう｣

｢……え？｣

私は学園長さんの方を見たまま固まってしまった。