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「なんとか、って、我慢してない?」
「我慢というか、慣れというか…」
伊作さんは妙に鋭い。
ここで忍術を学んでいるだけある。
なんて、忍術に関して何も知らない私が思うのもおかしいか。
「ダメだよ、痛い時は痛いってちゃんと言わなきゃ」
私が頷くと、彼は「わかったなら良いんだ」とお茶碗のご飯を口に運ぶ。
何も訊いてこないんだな。
私がどうしてここに来たのかとか、どうして何も食べてなかったのかとか、身体がぼろぼろになっていることについてとか。
「ご馳走様でした」
私は手にしていたスプーンと空になったどんぶりをお盆に戻すと、手を合わせた。
「僕も、ご馳走様でした」
次に、伊作さんも箸をお盆に置くと私と同様手を合わせた。
「それにしても新野先生、遅いねえ…」
伊作さんがそう言ったのとほぼ同時に、こちらに向かって駆けてくる足音が聞こえた。
襖の向こう側から数人分の足音と一緒に、「あ、おい待て!」と叫ぶ声が聞こえる。
どうやら新野さんではなさそうだ。
そして襖に影がうつって、すぐに開かれる。
「伊作先輩!」
と、そこには幼い丸眼鏡の男の子がいた。
「乱太郎」
伊作さんは驚いた顔をしていたが、その子を見て笑顔になった。
乱太郎…ああ、聞いたことのある声だと思ったら、昼間の子か。
明るい水色に変な柄の入った忍び装束を着たその子は肩で息をしている。
その子に続いて、小さい男の子が3人が走ってきて開いた襖の前で立ち止まる。
乱太郎と呼ばれた子と同じ装束を着た子と、青い装束を着た子、それから伊作さんの着ている装束より明るい緑色をした装束を着た子がそれぞれ1人ずつ。
「みんな来てくれたんだね!」
「目が覚めたって聞いたので…!」
私は3人の子達からの視線をちらちらと向けられる。
私がどうしていいかわからず瞬きをしていると、伊作さんと同じくらいの背丈の男の人がやって来た。
「留三郎、みんなに伝えてきてくれてありがとう」
伊作さんは自分と同じ緑色の忍び装束を着たその人を留三郎、と呼びお礼を伝える。
「いや、逆だ…行くって聞かなくてな。連れてきてしまってすまない」
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加糖雪(プロフ) - Hanakoさん» ありがとうございます!^^ (2021年4月25日 21時) (レス) id: ac64387404 (このIDを非表示/違反報告)
Hanako - 面白い!! (2021年4月17日 18時) (レス) id: 1d8bf8714f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年3月31日 9時