命短し絵を描け呪術師 其の弐【呪術廻戦】

15 暗合 ページ6

「アイツは特級術師でな」

「術師にも階級があるんですね」

「しゃけ」
こくり、と狗巻先輩が頷く。動作があると言葉の意味が大変わかりやすくて助かる。


「呪術師界は人手不足だからなあ。高専に通いつつ呪術師としての仕事もしていくわけだけど」


それは事前に五条先生から聞いた。
だから今日も私以外の1年3人は任務…いや仕事に駆り出されたという訳か。








「憂太はな、俺たちが一年の時に呪術高専に転校してきた。そん時のアイツは＿＿＿」



＿＿＿“里香ちゃん”に呪われてた。




パンダ先輩はそう言った。


「え、」


呪われていた？








パンダ先輩は、ぽつりぽつりと話し出す。







特級過呪怨霊、祈本里香。

祈本里香は生きていた普通の人間の女の子。
乙骨憂太とは幼い頃仲が良く、結婚の約束までしていた。




そんな幼い彼女はある日突然、死んでしまった。


事故で、しかも乙骨憂太の目の前で。



その後祈本里香は“呪い”と化し、怨霊として大好きな乙骨憂太を呪っていた。






「Aに憑いてるのは怨霊じゃなくて呪霊、と聞いているが、状態としては今のAにかなり近いぞ」


ちらりと呪霊の方を見ながら、真希先輩はパンダ先輩の言ったことに頷いた。
「そうだな。とてつもない力を持った呪いが常に背後にいた」





パンダ先輩が話を続ける。



呪いになってしまった祈本里香は、乙骨憂太に危害を加えようとする者を容赦なく攻撃して、彼を守っていたのだという。

実際に彼を虐めていた転校前の学校のクラスメイトを4人、ロッカーに詰めて重症を負わせたらしい。

その事件がきっかけで、乙骨憂太は呪術高専にやって来ることになる。







「ちょっと懐かしいな。俺ら初めて教室に入ってきた憂太に憑いてる特級呪霊見て、五条先生から何も聞いてなかったから、祓おうと総攻撃仕掛けたんだけどさ。見事に全員“里香ちゃん”に返り討ちにされて」

ははは、とパンダ先輩は笑った。



「しゃけしゃけ」

「ほんと。アイツ、弱々しいから虐めてやろうと思ってたのに。ボロボロにされたよ。最悪だった」

狗巻先輩と真希先輩もけらけら笑っている。




呪霊に返り討ち…きっとその時は笑い事じゃなかったはず。それをこんな明るく話せるようになっているということに、なんとなく安心した。

―→←―

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す