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ペインは後ろから肩のあたりに顔を出して寄り添った。
「ん、ごめん。なんでもないよ」
なんとなく心配してくれたのかな、とそんな気がしてお腹の底の方に重く溜まるそれを無視して口元に笑みを浮かべた。
劣等感なんて、よくある事だろう。
「そんなことより、最近の中学校って凄いね。ラボルトとか初心者向けの石膏像は置いてあるし、ほら見て、絵の具も一通り揃ってるよ」
また別の棚に視線を移すと、たくさんの筆と筆洗バケツ……そして、豊富な種類の絵の具。
もちろん美術科の学校と比べたら品揃えは劣るが、私の通っていた中学よりは本格的だ。
アクリル絵の具、水彩絵の具、油絵の具……
「そうだ、絵の具には毒があるって知ってる…?」
赤の水彩絵の具のチューブを手に取り、返事は期待しないがペインに独り言を聞かせる。
“カドミウム”という毒の含まれた色の絵の具が存在する。
カドミウムイエロー、レッド、オレンジなど……水彩絵の具の暖色系。
普通のものは毒性が低いため安全に使えるが、プロが使用するような本格的な代物は毒が強かったりするらしい。
「ナポレオンとかの18世紀の時代には、シェーレグリーンとかフレークホワイトの猛毒を含む絵の具が絵画に使われてたんだって」
ちなみに、カドミウムを含む絵の具も昔々から存在し使われていた。
「……皆ね、きっと命をかけて芸術をしてたんだ、ってそう思うと、なんとなく元気が出るような気がするんだよね」
美しい薔薇にトゲがあるように、綺麗な発色をする絵の具にも毒がある。
その毒の危険性を顧みず、なおも己の描きたいものを追求する精神。
最早狂っていないとできない。
むしろ芸術家はどこかで狂わないとやっていけない。
摘んだ指先で絵の具を転がす。チューブの銀色が鈍く光る。
その時、建物が揺れた。
「!なに、」
どこからかズドオオと大きい音も聞こえる。
無意識に絵の具を握りしめた。
「……見つかったのかな」
今回の任務に関する呪霊が姿を現したのかもしれない。
「行こう」
私は走り出した。
*
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reia(プロフ) - 加糖雪さん» ありがとうございます!(*^^*)もちろん、無断転載や改変などはしません! (2022年3月2日 17時) (レス) id: 0d7a47aa6b (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - reiaさん» 保存のみでしたらしていただいて良いですよ。画像の複製、改変、転載(複製や改変したものを含む)等は禁止しておりますのでご注意ください。 (2022年3月2日 17時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - souさん» souさんコメントありがとうございます!今後も番外編に挿絵描いてもらう予定なのでお楽しみに〜! (2022年3月2日 17時) (レス) @page32 id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
reia(プロフ) - 加糖雪さん» 挿絵の保存って大丈夫ですか? (2022年3月2日 16時) (レス) id: 0d7a47aa6b (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - reiaさん» reiaさんコメントありがとうございます!挿絵はこれからも番外編にちょこちょこ入れる予定なのでお楽しみに…! (2022年3月2日 14時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星藍 海 | 作成日時:2022年2月11日 2時