― ページ25
「なにそれ、すごいね呪術師って」
昼の中に夜の空間を作り出せる。
星の見える夜になるのなら、呪いなんか出ない場所に帳を下ろしたりしちゃって、地面に寝転んで星をひたすら眺めたり、思う存分絵が描けたりするのだろうか。
そんな子供みたいな空想を描いてしまうが、実際のところ、帳はどろどろと黒い絵の具が泥のように垂れ流されたようなもので、星空とは程遠い闇の景色を作り出していた。
「内側から簡単に解けるから、出る時は帳に触れるだけで良い。何かあったら頼む」
「……うん」
もしもの場合。
そんなこと起こるのか……あんまり考えたくないな。というか、考えられない。
「本当に呪い……いるの？」
「いる。まだ出てきていないだけだ」
言いながら、昇降口から校舎の中へと踏み入る。
「なんか、嫌な雰囲気とか、気配を感じるとかそういうのが全くないから実感湧かなくて……ただの夜の学校って感じで、ちょっとテンション上がってるまであるかも」
ずらりと並ぶ木製の下駄箱の間から土足で上がり込み、あはは、と笑ってみせると、恵は呆れ混じりの視線を寄越した。
「夜の学校でテンションあがるとか……小学生かよ」
「あっ、馬鹿にしたでしょ。美術家はね、死ぬまで子供のままの好奇心を殺さないように生きなきゃいけないの」
あれが面白そう。こうしたら楽しい。
直観的、柔軟な発想。
天才と秀才と凡人との違いはここにある。
というのも持論だが、かと言って私は凡人の部類である。
天才というのは、もう全てが違うのだ。
私のつまらない、小学生レベルのありきたりな発想なんかとは比べ物にならないアイデアを浮かべることが出来る。
加えて、そのアイデアを実現できる。
さらに、当の本人たちはそれが言うほど苦じゃないのだ。
発想するのも、作品を作るのも、ちょっとの努力と気合いで息をするのと同じようにやってのけてしまう。
私みたいに己の不足した才能を呪い、こんなことやめてしまうのが一番簡単に楽になれるのにと憂いながら取り組むのとは根本的に話が違うのだ。
1階をぐるりと見て回り、昇降口に繋がる中央の階段まで戻ってくる。
「……変だな」
「え」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 943人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
reia(プロフ) - 加糖雪さん» ありがとうございます！(*^^*)もちろん、無断転載や改変などはしません! (2022年3月2日 17時) (
レス) id: 0d7a47aa6b (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - reiaさん» 保存のみでしたらしていただいて良いですよ。画像の複製、改変、転載(複製や改変したものを含む)等は禁止しておりますのでご注意ください。 (2022年3月2日 17時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - souさん» souさんコメントありがとうございます！今後も番外編に挿絵描いてもらう予定なのでお楽しみに〜！ (2022年3月2日 17時) (レス) @page32 id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
reia(プロフ) - 加糖雪さん» 挿絵の保存って大丈夫ですか？ (2022年3月2日 16時) (レス) id: 0d7a47aa6b (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - reiaさん» reiaさんコメントありがとうございます！挿絵はこれからも番外編にちょこちょこ入れる予定なのでお楽しみに…！ (2022年3月2日 14時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：星藍 海 | 作成日時：2022年2月11日 2時
