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「そっか。怪我はしてない?」
もう一度、縦に振る。
話しかけられたことで、だんだんと恐怖で凍りついた頭が解凍されていく。
そして私を支配するのは焦り、不安。
「エプロンしてるけどさ、部活?」
壊れるのをなんとかして阻止したキャンバスたちを抱えて今すぐ逃げたい。
なんだっけ、“と”……この夜の外に。
「この学校、色んな学科があるって五条先生から聞いてたんだけどさ。確かにめっちゃ広いよね」
「……そ、です…ね……」
よく、人間は見えないものを恐れるとか言うけど、私は完全に逆だった。
見えなければ無いものと一緒だから、信じる信じないの決定権は私にあった訳で。
でもそれが見えるようになった途端、嫌でも存在を認めざるを得ない。
私を見つめる目の前のあれが、美術室の両腕のない幽霊。
嘘じゃなかった。
「君、どの学科に所属してるの?」
「び、びじ、じゅっつか、です……っ!!」
「え?呪術科?へえ、こんなとこにも呪術の勉強できる学校があるんだあ」
─────ち、違う!
否定を叫ぼうとするが、得体の知れない怪物に睨まれたままの私は、さっきからもうずっと上手く喋れていない。
絵の具で汚れるのも構わずに、ぬるりとした感触の残るパレットと筆を握りしめてただ震えることしかできなかった。
「ってかそれも五条先生から聞いてないし……あ、帳」
頭上から、夜が溶けだすみたいに明るくなっていった。
「今日はやけに早いわね。いつもならマイペースで登場が遅いくせに」
「よっし、A!五条先生に事情説明___」
あ、ダメだ。
視界が真っ暗になった。
次いで、体が傾く。
「A!?」
もうむり、意識……もた、な…………
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加糖雪(プロフ) - ねむさん» ありがとうございます!続編でもよろしくお願いします〜! (2022年2月11日 4時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
ねむ - ひぇ〜!また更新されておる〜!!めちゃくちゃ良いデス!自分のペースで続編よろしくお願いします (2022年2月7日 22時) (レス) @page43 id: 38d2d0b865 (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - ねむさん» ねむさんコメントありがとうございます!面白いですね〜どんな風に強くなっていくか、今後の展開に期待していただければと思います! (2022年2月7日 9時) (レス) @page42 id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
ねむ - 夢主、絵が命かけれるほど大好きなんですね!えと、絵を破かれたりしたら強くなる…みたいなことを妄想しました(><#) (2022年2月5日 20時) (レス) @page35 id: 38d2d0b865 (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - るきー流季ーさん» るき―流季―さんコメントありがとうございます!絵師を目指していらっしゃるんですね。この作品をもって私も読んでくださる方を応援できるように頑張ります! (2022年1月30日 22時) (レス) @page23 id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星藍 海 | 作成日時:2022年1月20日 1時