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「え…?」
「いいわね。せっかくだからもっとAに絵を描いてもらいましょ!」
突然悠仁が何を言い出したのかと思えば、野薔薇もそこに乗っかった。
「はい、伏黒も!」
「え、俺は別に……」
悠仁は言いながら恵の腕を組んだ。
「いいから行くの!」
そして野薔薇も一緒に引っ張りながら、少し離れていき、こう?と腕を頭に回したり、膝を立てたりしてポーズを取っていく。
美術科を離れて呪術高専に来れば、美術の授業は受けられなくなる。
だからその分、時間を見つけてとにかく絵を描きまくろうと考えていた。
1日描かなかっただけでも腕は鈍る。
3ヶ月ともなれば、考えるのも恐ろしい。
3ヶ月、描いて描いて描いて、授業が無くても自力で力をつけてやる。
そう密かに自分に誓っていたのだ。
「んー…それじゃあ、ひとつのポーズにつき1分で…合わせて3分で描くね。色んなポーズよろしく」
3人に向かって頼んだよ、と笑いかける。
「おう!」
「任せてよね!」
「あ、ああ……」
絵を描くことは呪い。
何度その事で苦しくなっても、辞められない。
辞めれば、絵を描くことで苦しむことはなくなるはずなのだ。きっともっとずっと楽に生きられる。
それなのに私は絵を描くことが好き。
ああ、馬鹿みたいだ。
辞めたら私は私じゃなくなる気がしている。
*
「みんな〜どう?上手くやってる?……って、何してんの」
「五条先生」
日が暮れ始めた頃、五条先生が戻ってきた。
私の目の前で完璧なブリッジを軽々決めている悠仁と、色っぽく髪の毛を描きあげてこちらに振り向くポーズの野薔薇。
完全には照れくささを捨てきれずも、こちらにビシッと指をさし、所謂「真実はいつも一つ!」の格好をしている恵。
そんな3人を、土手を降りて私の元へと歩きながら五条先生はまじまじと眺める。
悠仁がブリッジしたまま、
「実は今、Aの絵のモデルをしてて」
はっきりと言った。その体勢でどこから声が出るのだろう。
「なるほどねえ。てか恵まで!」
五条先生がぶはっ、と吹き出す。
「…怒りますよ」
とは言いながらも、恵はそのポーズをしっかり保ったままだ。
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加糖雪(プロフ) - ねむさん» ありがとうございます!続編でもよろしくお願いします〜! (2022年2月11日 4時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
ねむ - ひぇ〜!また更新されておる〜!!めちゃくちゃ良いデス!自分のペースで続編よろしくお願いします (2022年2月7日 22時) (レス) @page43 id: 38d2d0b865 (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - ねむさん» ねむさんコメントありがとうございます!面白いですね〜どんな風に強くなっていくか、今後の展開に期待していただければと思います! (2022年2月7日 9時) (レス) @page42 id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
ねむ - 夢主、絵が命かけれるほど大好きなんですね!えと、絵を破かれたりしたら強くなる…みたいなことを妄想しました(><#) (2022年2月5日 20時) (レス) @page35 id: 38d2d0b865 (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - るきー流季ーさん» るき―流季―さんコメントありがとうございます!絵師を目指していらっしゃるんですね。この作品をもって私も読んでくださる方を応援できるように頑張ります! (2022年1月30日 22時) (レス) @page23 id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星藍 海 | 作成日時:2022年1月20日 1時