愛から眺めて、向こう側を置いていく【RKRN】

・ ページ28

中高共に仲が良く、付き合いの長い友達にはせがまれていつも勉強を教えていた。
決まって言われるのは「お前スゲーな」。


果たして本当にそうか？
やることをやって、その結果優等生になって、けどもっと上にデキる奴がいて、そのことがなんとなく不満で、気づかないフリしてなにもしない。

必死になって何かをやって、それで一番を取れなかった時のことが怖い。
普通にやってこれだけできるんなら、そのままでいい。




気がつけば受験に向けての準備が始まった。
高校という世界がこれまでと同じように回っていることを理解しきってすぐ、一年生の期末テストの結果を見てすぐに志望校を決めた。
日本の大学で5番目くらいに頭の良いところにした。

中学で上の下、頭良い奴の揃う高校に行っても上の下をキープしたということは勉強をそれなりに頑張ったってことだ。
だから大学でもうひと踏ん張りしなきゃ。


もともと偏差値の高い高校だからそのくらいのレベルの大学を目指すのは珍しくないし難しくない。そこその努力でなんとかなる。




俺より確実にデキる奴らの中には日本一頭の良い大学を選ぶ人もいたし、海外の大学を目指す人もいた。

これも、うちの高校では珍しくないし難しくないパターンだった。






勉強が好きなのかと聞かれることがたまにある。好きかどうかは分からない。やることをやっているだけ。

はっきり分かるのは、俺はどちらかというと週末に友達とラーメン食いに行ったり、帰りにコンビニに寄り道してアイスやらホットスナックを齧る方が好きということだ。


最近はみんな引退前の部活に打ち込むか、自習室通いみたいでそんな風に過ごす時間はなくなってしまったけど。




俺だって家に直行してガリガリ勉強してる。
やっぱり定期テストと受験とでは話が違う。落ちたらシャレにならない。

そうして必死に勉強してる姿を人前に晒すのがなんとなく嫌な気持ちになる。
だから俺は単語帳を相棒に、毎日チャイムと同時に寂しく帰宅しているのだ。



夕焼けの空の下、バス停までの道を単語帳を捲りながら。
長い石階段を下りる。





『桜吹雪にこのまま攫われちゃいそう』





(攫えるなら俺をこの同じことしかできない日々から攫ってくれ……)

25 (消えたい……)→←24 優等生

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す