21 「不運?」 ページ24
俺のいる辺りに影が落ちる。
何かが迫る気配に、一瞬で振り返った。
「…!!」
と、俺背を向けていた壁際に置かれていた大きな棚が、こちらに傾いてきているところだった。
「危ない!」
伊作が叫ぶのが聞こえた。
こちらに飛んできた伊作は俺の腹の辺りを逞しい腕で抱え、その身の軽さから想像できない力で引っ張った。
2人でもつれ合って棚の下から逃げるように転がる。
咄嗟に目を閉じているとばたん、がしゃん、と大きな音が聞こえた。
「だ、大丈夫…?」
目を開けると、伊作の顔が目の前にあった。
俺の頭をしっかり手で支えて守り、俺の体の上に覆いかぶさって庇っている。
伊作の体しか見えないような視界の隙間から、ちらりと棚の方を覗く。
丁度俺のいた所に高くて大きい棚がどーんと倒れ込んで、積もっていたらしい埃が舞い上がっているところだった。
「あ、ああ。大丈夫…」
何とか返事をした。
こうして近づいてみると、伊作は俺よりずっと小さい身体をしている。
(それなのに俺をこんな簡単に守って…)
忍たまで1番年上でも15歳だと大川さんは言っていた。
伊作が何歳かは知らないが、歳下であることに変わりはない。
忍者のたまご、それが忍たま。
やはり忍者を目指しているから、こんなことができるのか。
驚き反面、感心していると伊作はそのままの状態で俺の肩を掴んだ。
「怪我は?!してない?!」
慌てた様子で声を少し荒らげた。
「うん、大丈夫。守ってくれてありがとう」
「よ、よかった…ごめん。僕の不運のせいで」
「不運?」
「僕、忍術学園では不運大魔王って呼ばれるくらい不運でさ…こういうことは日常茶飯事っていうか……一緒にいる人を巻き込むことも少なくないんだ。本当にすまない」
(そんな度の過ぎたことがあるのか…)
ただの偶然かもしれないような気もするが、偶然じゃないことが分かっているから伊作は言い切っているのだろう。
申し訳なさそうな顔を見せる伊作に気にしないで、と声をかけた。
それと同時に胸のあたりがざわ、と騒いだ。
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加糖雪(プロフ) - まぶぴちょこさん» ありがとうございます!( ; ; )以前にもコメントくださっていたまーぶりんさんですよね…?!コメントとっても支えになってます…!とっても嬉しいです。 (2022年11月6日 0時) (レス) @page45 id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
まぶぴちょこ(プロフ) - 受験お疲れ様です!!大変な時期なのに更新ありがとうございます( ◜_◝ )無理せず自分のペースで頑張ってください…! (2022年11月5日 16時) (レス) @page45 id: 045921842f (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - 小桜さん» 小桜さんコメントありがとうございます!天女ものは色々なパターンがありますが、自分が新しく書くならどういうものがいいだろうと試行錯誤して書いているのでそう言っていただけて嬉しいです(*´-`*) 更新頻度は低めですが今後もよろしくお願い致します…! (2022年1月7日 20時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - まーぶりんさん» まーぶりんさんコメントありがとうございます!繰り返し読んでいただいているようで本当に嬉しいです…!応援ありがとうございます。頑張ります! (2022年1月7日 20時) (レス) id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
加糖雪(プロフ) - 羽場さん» 羽場さんコメントありがとうございます!設定を気に入っていただけて嬉しいです。ゆっくりとですが更新していきますのでよろしくお願い致しますm(_ _)m (2022年1月7日 20時) (レス) @page34 id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年7月12日 23時