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「......」
「私、嘘つきなの」
自分を嘘つきと読んだ言葉がやけに哀しそうで耳から離れなかったのを覚えていた。
「それでも貴女は優しいです」
「優しいひとですよ」
この時の僕は彼女の言葉を否定した。
「私、貴方みたいになりたかった」
美味しいご飯を食べ終わり、彼女は皿を洗っていた。
まだ水が流れ、陶器の皿がぶつかる音が聴こえるからきっとそうだ。
「貴女はそのままでも素敵ですよ」
「本当かしら」
「本心です」
「そう思えるなんて羨ましいわ」
「人間みたいですね」
「この世界で生きてたら嫌でもこうなるわよ」
「僕もそうなっちゃうんですかね……」
「無理に染まろうとしなくていいのよ」
「じゃあ、染まらないように頑張ります!」
「応援してるわね」
「......ねえ、もし人間が近くにいたらどうする?」
「調理して貴女に食べて貰いたいですね」
「......そう」
「貴女は人間みたいに細身な方なので一杯食べて貰いたいです。それに最近は、元気が無いみたいなので」
「優しいのね」
「えへへ」
「私の姿を見ても恐がらないでね」
「そんなに恐い姿をしてるんですか」
「ええ、きっと人間みたいに苦しむわ」
「僕は人間じゃないですよ」
「やっぱり純粋ね」
頭に触れた手は細く小さいものだった。
僕の爪が当たったら崩れてしまうような弱い力で手を握ってくれた。
Fin.
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