36話 僕の兄は ページ36
雅紀は病室のドアを開けた。
「失礼します」
個室の部屋。
ベッドに横たわる白髪交じりの男性。
心拍を伝えるモニターが部屋に響いている。
窓に鉄格子が病院だけではないことを物語っていた。
「ご家族ですか？」
部屋にいた看護師が雅紀に軽く頭を下げる。
「……遠い親戚です。櫻坂さんの様態は？」
「昨夜血圧が急激に下がりました。一時は危篤状態になりましたが、先程容態が安定されました」
何か変化があれば知らせてくださいと看護師は病室を出て行く。
病室に翔の父の櫻坂と雅紀。
酸素マスクの下の顔は翔によく似ていた。
うっすらと開いた目に思わず一歩後ろに身を引いてしまった雅紀。
『父』というワードに心が緊張してしまったことを少し荒くなった呼吸で知る。
大丈夫、大丈夫。この人は翔の父。
「……誰……かな？」
優しい声に強張っていた肩から力が抜けた。
「……初めまして。俺、雅紀っていいます。翔ちゃんの弟です」
翔という言葉に櫻坂の目が優しく緩む。
「……シスター百合さん…から話を……聞いています。君が雅紀君ですか……」
「はい……5人兄弟の真ん中で」
「あの子は…君から見て……どんな人間なのかな…？百合さんからは聞いているけれど……俺があんなことをしてしまったから……正直な人…間に育ってく…れたのか……」
呼吸が苦しいようで言葉が途切れ途切れになっていく。
「あまり無理して話さないでいいです。俺が話しますから」
ベッドのそばにあったイスに腰を下ろす。
「……翔ちゃんは強くて優しい。頭も良くていつも……俺たち兄弟を助けてくれる」
櫻坂は雅紀の言葉に何度も頷き、聞いている。
「曲がったことが嫌いで、自分に対しても人に対しても悪いことはちゃんと言ってくれる。櫻坂さんの言うまっすぐで正直な人間そのものだよ」
微笑みがたが翔に似すぎていて心がぎゅっと摑まれる感覚。
「俺……翔ちゃんがいなかったら壊れてた。恩人なんだ」
「恩…人……？」
「俺に感情を取り戻してくれた人なの。泣くとか笑うとかね。」
不思議そうな顔をした櫻坂。
「泣いた分だけ強くなるって、お父さんが教えてくれたって……」
覚えていてくれたか、小さく櫻坂が呟いた。
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むつき(プロフ) - はじめまして。探してコメントを頂きとても嬉しいです。続Homeも始めました。お時間のある時に覗いてやってください。コメント嬉しいです。ありがとうございます。 (2014年11月23日 21時) (
レス) id: 4345b608cc (このIDを非表示/違反報告)
あやち(プロフ) - はじめまして。HOME読ませて頂きました。以前読ませて頂いたのですが、保存等を行っておらず、お礼を伝えることが出来ませんでしたが、やっと見つけた!!読ませて頂いた時、涙が止まらなかったです。兄弟って素敵だなって思いました、素敵な作品ありがとうございました (2014年11月23日 18時) (レス) id: 6dc0a1d5bc (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - 翠さん» 翠さん。涙には心をキレイにする作用があるらしいです。いっぱい泣けるようにいいですよね。今日は次男さんのお誕生日ですね。っと言うことで大量更新します！ (2013年1月25日 21時) (レス) id: 75d4746b37 (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - 翠さん» 翠さん、コメントありがとうです。兄弟たちに支えられる絆が表現できたらと奮闘中です。 (2013年1月25日 19時) (レス) id: 75d4746b37 (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - アリスさん» アリスさん、私のほうがいつもお話を読ませていただいて号泣させて頂いています。つらい過去もみんなと共であれば前に進める、そんな話を書きたいと日々精進中です！ (2013年1月23日 18時) (レス) id: 75d4746b37 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：むつき
| 作成日時：2012年12月30日 17時
