【文スト】文豪さん、反応記録帳。

＊感情が消えて、橋の近くにいた ページ15

「.....」

中島敦
「Aさん？」
あまり刺激をしてはいけないと分かりつつ、心配でつい声を掛けてしまう。
「こっちに行きましょう、ほら、鯉泳いでます！」
持ち前の明るさでいろんな所へ貴女を連れていく。
常に考えているのは、
「戻ってきて欲しい」
これだけ。

太宰治
「ちょっと！入水するんだったら私も呼んでよね！」
「一人で先にとか、許さないよ！」
とか、言いながら貴女には死んで欲しくない。
また大切な人を失いたくないから。
「あー、でも最近冷えるからねぇ」
「また別の機会にしようよ」
それ以降橋に近づかせない。

国木田独歩
「...何を眺めている」
横にスっと来て、手すりに手を預ける。
「この橋の補修工事はもう終わっていたんだな」
俺の予定では明後日の筈だったんだが。
明日の仕事のルートが変わってしまったではないか！
横で手帳を開いてバタバタしている国木田を見てると、一緒に笑いあってた昔をちょっと思い出す。

福沢諭吉
「川が好きなのか？」
別に、特別何も思いません。
「そうか」
川が夕日を反射させ、眩い光が目に差し込んでくる。
「今日は鍋にするか」
具材は何を入れたい？
今の貴女にそんな質問、無意味だと分かっていながらしてしまいます。

芥川龍之介
「飛び降りるか」
後ろから声をかけられる。
「貴様が飛び降りようと、無意味な話だ」
その瞬間、目の前に芥川の外套が形を変え目の前に飛び出してくる。
「僕が落ちぬようにするからだ」
別に、飛び降りたい訳じゃない。
「...ならいい」

中原中也
「そんなとこにいねぇで、早く帰ろうぜ」
貴女の異様な雰囲気を察して、明るい声で話しかける。
「もうじき暗くなるしよ」
手をぎゅっと握って歩き出す。
「ほら！こんなに冷えてるじゃねぇか！」
早く帰って、暖まるぞ！
貴女を橋に近づけない口実を作るのに必死。

森鴎外
「綺麗だねぇ」
「川が真っ赤だ」
久しぶりに2人で並んで歩く外は何もかも新鮮で。
貴女に引っ張られるように、首領も立ち止まる。
「Aは川遊びなどした事があるのかい？」
いいえ。
「ふふっ、そうだろうねぇ」
反応の鈍い貴女とは対象的な、眉を下げて笑う彼。

坂口安吾
「危ないですよ、此方へ来てください」
「今の貴女なら飛び降りかねません」
グッと強引に手を引き寄せ、車に乗せる。
「綺麗な景色が見たいなら、僕が何処へでも連れていきます」
安吾の声だけが響く車内に、差し込む夕日。
「一緒に外で笑っていた日が懐かしいです」
思わず昔を馳せる。

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