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「虎杖はさ、」
「ん?」
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「死ぬの怖くないの?」
辺りは既に墨をぶちまけた様に暗い。
そんな校内にある数少ない灯り。
月の光が良く差し込む中庭に居た。
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2人ともどうも寝つげず、寮から抜け出してきたのだが、なんだかむず痒いような雰囲気になる。
「…怖いよ?」
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「めちゃくちゃ怖い!!
明日死んじゃったらもう今日が最後の夜なんだって、」
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「無性に皆に会いたくなるんだよな」
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「Aを抱きしめないとって、思う」
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言葉とは裏腹にいつもと同じ、太陽の様な笑みを浮かべる。
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「…悠仁、」
「……」
彼は、何だ?と言う変わりに、顔の笑みを解き少し目を開いた。
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自分がこれから言おうとしている言葉に、目の奥がジワジワと熱くなる。
だめだ、泣くな。
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泣かれたら、困るよ、
そんな自分への言い聞かせを他所に、どんどんと涙が込み上げてくる感覚がする。
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「…ッ、なんッで、悠仁、は、」
「ッずっと、」
泣く、のを、我慢してる、の
決壊してしまったダムのように、溢れ出す。
もう泣いてしまったのだから、泣き切ろう。
悠仁に、なんで我慢を、といっているのに、自分が我慢するのはおかしな話だ。
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何の返答も聞こえなかった。
ただ、目を拭って視界が晴れた一瞬。
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彼は声も出さず泣いていた。
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月明かりが2人に降りかかる。
眩しい位に、刺激的な自分たちの生活がふと重なった。
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死にたくない
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この一言がどれだけ自分に重く突き刺さったか。
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作者名:もちのあじ | 作成日時:2021年2月7日 23時