【MHA】死にたがり女子は今日も逝く【ヒロアカ】

個性 ページ10

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｢冬郷さん、行きましょう？｣
｢わ、はい。八百万さん。｣

彼女の初めの印象は、廊下に蹲る救護者。その後話して得た印象は、物腰の柔らかなゆるっとした、居心地のよい方。けれど、どこか警戒心は無くさぬ方。仕方が無いと思う。現に自分も、警戒心がないと言えば嘘になる。何せ初対面なのだ。彼女だけでなく、このクラスの全員に一定の距離感が存在するだろう。

｢個性把握テスト……｣
｢どうかなさいましたか？｣
｢あー…僕の個性、活かしどころがないなぁと思いまして。｣
｢お水、ですものね……凍らせたりとかは？｣
｢氷結は僕の上位互換です。あくまで水だけで、熱を左右する力は備わってませんので……｣

このテストは、合理的では無い。体育系統に有利ではない個性の持ち主が、それだけのために除籍処分だなんて、有り得ない。相澤先生の提示された条件は、きっと私達を奮い立たせる為の嘘なのだろう。現に、先程まで楽観視していた方々も真剣な顔つきになっている。かくいう私も、手を抜く気は更々無いのだが。冬郷さんの水。使い方によってはきっととても強力な個性になるだろう。けれど、今回のテストで一体どうやって活かせるのか。

｢うーん……まぁ、やれるだけ頑張ってみます。｣
｢そうですわね……私も負けませんわ！｣
｢あは、八百万さんには適わないです。｣

苦笑して頭を搔く冬郷さんに、己の胸の前でぐっと拳を作る。私はいつだって負けない。そのつもりでここに来たのだから。




掌、足の裏に意識を集中させる。失敗しないように。足の裏に水を纏わせ、地面から僅かに浮かす。相澤先生の号令と共に、後ろへと向けた掌から思い切り水を噴出してその勢いに任せた。まだまだ、加速、出来る……！50m地点で個性を解除し地に足をつけば、八百万さんが走り寄ってきた。結果は4秒52。5秒手前だ。

｢凄いですわ！そんな使い道がありましたのね！｣
｢あ、芦戸さんとか青山くん、見て…思いついたんです……でもこれ、しんどくて……｣

思い付きでやった為、コントロールが間に合わない。なかなかに余分な水を放出してしまったのか、たった50mに体内の水分をだいぶ持ってかれた。喉が渇いて仕方が無い。肩で息をしながら、けほ、と咳き込む。若干涙で霞む目を凝らして自分の水筒を手に取れば、もう我慢ならないと一気に中身を飲み干した。もう少し持ってこれば良かった、これでは他の種目での補給分が無い。


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