優しい女の子 ページ8
.
｢……おなか、いたい…｣
ぎゅるる、と朝から痛みを主張する腹が鳴る。今日は調子が悪く、起きた時からお腹が痛かった。朝腹痛になる事自体は良くあることなのだが、今日は特に顕著だ。理由はわかっている。今日が、雄英高校入学式なのだ。
｢メンタルぅ………頑張ってください……｣
痛む腹を必死に摩りながら、歩ける様になるまで廊下の端に蹲る。きっと教室には沢山のキラキラした、ヒーローの卵達がいるのだ。僕なんかと違って、それに憧れそれを夢見て、今現実にしようとしている人達が。
僕の教室は1Aらしい。例年1A1B共に20人ずつらしいが、今年は総合点で同点が出た為、定員を1人だけ増やしたそうだ。筆記のギリギリさ的にその同点の片方は僕な気がする。つまり最下位スタート。そのプレッシャーも相成って、腹の痛みは吐き気に転換されかけていた。
｢……あら？ど、どうしました！？お加減がよろしくありませんか！？｣
｢え……｣
慌てた様に駆け寄って来る声に、そろそろと顔を上げる。こんな朝早く、もう登校して来た人がいるなんて。人混みの廊下を歩くハメになる前に、と随分早く来たのだが。
そこに居たのは、艶やかな黒髪をポニーテールに結った女の子だった。とてつもなく、美人。困った様に眉を下げ、こちらを窺うように見つめている。
｢お腹、痛みますか？｣
｢………だ、いじょうぶです…｣
｢保健室行きますか？先生がいらっしゃるかはわかりませんが…｣
入学初日から人様に迷惑を掛けたくない、お願いだから放っておいてくれと思いつつ大丈夫だと口にするが、どうにも吐き気が強く詰まってしまう。口先だけで大丈夫ではないと判断したのだろう、面倒くさがる素振りも見せず彼女は保健室のある方面を見つめた。さすが、雄英生徒。見て見ぬ振りもせず、面倒くさがりもせず。落ち着かせようと背を摩ってくれている。
だけど、今、背を摩られると。胃液が逆流して……やばい、吐く。
｢ゔ、えぇ………っ、｣
慌てて掌で口元を覆うも、胃液だけの吐瀉物は指の間から床へと落ちる。最悪だ。何も食べていなかった事がせめてもの救いだろうか。しかし、入学当日、初めましての人の前で吐いた事実は変わらない。恥ずかしい、申し訳ない。吐いたせいで滲む涙と引き攣る喉をどうすることも出来なくて、口を抑えたその体制のまま固まっていると、そっとハンカチが差し出された。
｢これ、お使いになって下さい。すぐにお水をお持ちしますわ。｣
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 90人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆきねこ。(プロフ) - 過眠さん» なんと…！！ありがとうございます！！頑張りますのてこれからもよろしくお願いします(>_<) (2018年7月4日 7時) (
レス) id: 819d312a56 (このIDを非表示/違反報告)
過眠(プロフ) - ウホォ…大好きです(唐突な告白)長文とか読むの苦手なんですけど、この作品は内容がすごく好きなのでどんどん読んでいけます！！更新頑張ってください！！ (2018年7月4日 0時) (レス) id: 0e313d130c (このIDを非表示/違反報告)
ゆきねこ。(プロフ) - moeさん» わぁぁぁぁありがとうございます……！！！頑張ります！！！ (2018年6月27日 17時) (レス) id: 819d312a56 (このIDを非表示/違反報告)
moe(プロフ) - この作品、本当に大好きです！夢主の心境の描写だったり、そういうものが本当にうまいなあとそこにも感動しました！応援してますね！ (2018年6月27日 16時) (レス) id: 32c275f53e (このIDを非表示/違反報告)
ゆきねこ。(プロフ) - リコさん» ありがとうございます！頑張ります！ (2018年4月23日 8時) (レス) id: 819d312a56 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆきねこ。 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年2月26日 23時
