記録82 ページ34
私が長い夢から目を覚まし、数時間経った。
目が覚めた後、すぐにご主人様はナースコールをして下さり、お医者様達も口を揃えてよかったですねと仰ってくださった。
その後はご主人様から、私が海に落ちた後の話を聞いた。
結局の所、爆弾は起爆せず、私がただ海に身を投げたこととなったそうだ。
『申し訳ありませんでした』
tn「いや、俺も止めれんくてごめん…」
『ご主人様に頂いたペンダントもなくしてしまいました』
tn「そんなんどうでもいい。Aが無事でいてくれたことがほんまによかった｣
『ご主人様は本当に優しいですね』
こういう時、微笑んだり出来たらいいのですが、元々感情は持っていたということを思い出したところで、長年無感情に生きていた足枷は取れない。
けれど、ご主人様は私の意図をくみ取ってくれているのか、眉を下げる。
tn「それはAが優しいから、そう見えるだけやで」
ご主人様は立ち上がり、私の頭をぽんぽんと撫でる。
tn「とりあえず、皆に連絡してくるわ。皆心配してたから」
『ご心配おかけしてすみません』
tn「心配しとるのはこっちの勝手やし、謝ることとちゃうよ」
『ですが』
tn「ですがも何もないねん」
ほら、病人は大人しく寝てなさい！と、無理矢理私をベッドに寝かすとご主人様は部屋から退出した。
『…私、病人ではないのですが』
負傷者と言った方が、言葉的には合ってるので誰もいなくなった部屋で1人、訂正し直す。
皆様にお礼を言わなくてはなりませんね。
医療器具の機械音だけが部屋に響き渡る中、私は白い天井を見つめる。
昔、マスターの部屋にいた時もこんな感じだったことを思い出し、懐かしさを覚える。
掛け布団に目線を下げると、そこに息の根の詰まる赤いものはなく、私のベッドの上には温かな赤いものがかけられていた。
『赤は赤でも…感情は沢山生まれるものなのですね』
私はまた1つ感情を覚えた気がして、少しずつではあるけれど生きている心地を感じ始めた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1101人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
マァト(プロフ) - 完結おめでとうございます！とっても幸せな気持ちになれる作品でした。とてもほわほわしてます！モノクロ少女も応援してます！ (2020年12月4日 17時) (
レス) id: 19a370924b (このIDを非表示/違反報告)
雪村(プロフ) - おいちゃんさん» おいちゃん様、コメントありがとうございます！楽しんでくださったのであれば、作者としては大変嬉しい限りです。ここまでご愛読本当にありがとうございました！ (2020年11月30日 20時) (レス) id: 269a7df98c (このIDを非表示/違反報告)
おいちゃん(プロフ) - 完結お疲れ様でした！初コメ失礼します！いちtn推しとして楽しませて頂きました！素敵な物語で最後メイドちゃん笑ってくれて良かったなってほっこりしてます。。お疲れ様でした！ (2020年11月29日 18時) (レス) id: 9941211368 (このIDを非表示/違反報告)
雪村(プロフ) - 紫乃さん» 紫乃様、コメントありがとうございます…！はわわ、楽しんで読んでいただけているのであればとても幸いでございます！成程、ご意見の方ご参考にさせて頂きますね！よければ最後までご付き合い頂けますと嬉しいです…！ (2020年10月21日 19時) (レス) id: 269a7df98c (このIDを非表示/違反報告)
雪村(プロフ) - マァトさん» マァト様、コメントありがとうございます…！そうですね、そろそろ長いお話にも幕引きです。ここまでお読み下さり誠にありがとうございます！成程、ご参考にさせて頂きます！よければ最後まで楽しんで頂けますと幸いです…! (2020年10月21日 19時) (レス) id: 269a7df98c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雪村 | 作成日時：2020年8月15日 14時
