続・ヤンデレな好青年に捕まりました。

50話　劇 ページ6

「楽しかったね」
「どこが」
お化けも怖いがそれよりもコイツの方が怖いわ。
「俺は楽しかった。怖がるAを見て」
「悪趣味」
「ははは。次どこ行く？」
「疲れた。……あ、もうそろそろ劇だよね。見たい」
「うん、見に行こうか」
体育館はほぼ満席で私たちも偶然見つけた前の見やすいところに座った。
別に誰が出てるとかは無いけど。けどこういうのを見るのは好き。
演目は「白雪姫」をアレンジしたものだった。
所々、ギャグを入れて周りからのウケはいい。
人の前で堂々と演技が出来て、好きなことをして輝いている人を見るのは楽しい。
無事に白雪姫を助け出して王子様と結婚式を挙げ、母親と仲直りするところで劇は終わった。
役者が手を繋いでお辞儀をすると拍手がわき起こり、役者の姿が幕で見えなくなるまで鳴り止まなかった。
「面白かったね」
「Aが楽しかったなら何よりだよ」
「劇見てた？」
「見てた見てた」
本当だろうか……。
「狩人と白雪姫の追いかけっこの所で笑ってたAの顔がとても可愛かった」
「劇見てなかったよね」
「見てたよ。ちゃーんと覚えてるって。Aがどこでどんな表情をしたのかもね」
「それ、見てたって言わない」
小さく溜息を吐いて、体育館を出た。そろそろフィナーレが始まる。

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