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Fairu.1 太宰治×癒し系妻×中原中也 ページ1

扉が開く音がする。今日はどっちが早く帰って来るのかな、と予想しながらパタパタと玄関の方に走る。治さんは最近忙しそうだったから中也さん、かな。
 扉を開けてそっと様子を見ると機嫌が悪そうな中也さんがいた。予想、当たった。そんな喜びからか、彼が帰ってきたからなのか。顔が綻ぶのが判る。
「中也さん、お帰りなさい! 今日は肉じゃがです! お酒も買ってきたので」
 彼にギュウと抱きしめられ「飲みましょう」という、私の言葉の続きは遮られた。俯いていて彼の顔は見えないけれど、きっと疲れたのかもしれない。背中に手を回し、背中を優しく叩くと彼はピクリと反応した。
 マフィアの幹部の忙しさなんて、一般人の私なんかじゃ判らないけど出来るだけ疲れはとって欲しい。一定のリズムで背中を叩いていると彼は落ち着いたみたいだ。
 一度ギュウと私を抱きしめる力を強めてからばつが悪そうに離れた。なにか声をかけようと思ったけれど、彼がなにか云おうとしているので其の言葉を待つことにする。
「__ああー……済まねェ。……A、接吻しても佳いか?」
 ピタリ、と。私の動きが止まった。結婚してから何度かはこういう事はあったけれど、何度しても慣れない……です。
 赤くなる顔を隠そうとしても中也さんによって止められる。中也さんに頬を撫でられ、なんとも云えないほど端整なお顔が近づく。
 へ、え、と変な声が出る。其れでも中也さんは気にしていないみたいだ。目を瞑って構える。……云い方可笑しいかもしれないけれど、本当に恥ずかしいんです。
 吐息が当たって妙に恥ずかしい。結婚してから何度かこういう事はあったけれど、何度しても慣れない。……む、寧ろ慣れるものなの……?
 手に力が入った。子供みたいで嫌だけど、本当に恥ずかしい。は、と彼の吐息が態と当てられる。心臓がバクバクと音をたてた。
 来る……! と構えた私の耳元でチュ、と態とらしく音を立てて中也さんは離れた。……耳、に接吻された……?
 困惑する私を余所に、彼はニヤリと笑う。いや、あの……耳も恥ずかしいけど。何とも云えない空気の中、彼は私に囁いた。「なァ、A。耳は」
 中也さんの言葉の続きももぎ取ったのは勢いよく開いた扉の音だった。中也さんと私は何か悪いことをしていた訳でもないのに動きが止まる。

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 文スト , 短編集   
作品ジャンル:アニメ
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マリマリ - ドス君とゴーゴリ君でお願いします。 (2018年2月28日 21時) (携帯から) (レス) id: 28273e2d77 (このIDを非表示/違反報告)
もふ子(プロフ) - マカロンさん» 遅くなってしまってすみません(^-^; はい、了解しました! (2017年11月5日 17時) (レス) id: b313acaf74 (このIDを非表示/違反報告)
もふ子(プロフ) - Junさん» 遅くなってしまってすみません(^-^; はい、了解しました! (2017年11月5日 17時) (レス) id: b313acaf74 (このIDを非表示/違反報告)
マカロン - リクで、中也さんと僕(芥川)お願いします! (2017年10月20日 16時) (レス) id: d2e6ec52ac (このIDを非表示/違反報告)
Jun(プロフ) - リクエストで太宰さんと森さんの二人を書いてくださいっ! (2017年10月19日 7時) (レス) id: 9dd92fd273 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もふ子 | 作成日時:2017年5月4日 22時

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