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玖 【家路】 ページ10

「ーーそれにしても吃驚したわよ!あんたおだんごもお蕎麦も食べた事ないなんて!
今までどんな物を食べてたの?」
「...うるさい」

きゃいきゃいとはしゃぐ姫に対し未だにつんとした表情の男。
「ねぇ、楽しくないの?私はすっごく楽しいわ!」
「それは良かったな。俺は子守で疲れた」
「んなっ...ふ、ふん!せっかくのお出掛けだもの!怒らないであげる!」
ふんぞり返る桜華に彪雅は「そうか」と一言だけ返した。
と、その時彪雅はある事に気付いた。

ーー町人たちがそろそろと家へと帰って行く。

「...私たちも帰らないと危ないわね」
少しずつ紫色へと染まってゆく空を見上げて桜華はそうこぼした。
「ああ....っと、そうだ」
「?」

彪雅が桜華の手にあの花簪を乗せた。

「...!こ、これ...」
「簪屋の店主からだ。しかもタダで貰えたからな。今度お礼に行くぞ」
「う、うん.....ありがと」
「俺に言ってどうする」
ふい、と背を向ける彪雅を桜華はただ見つめた。

「どうした、さっさと帰るぞ」
「わ、わかってるわよ.....あれ?」
「どうした」
桜華がある方向を指差す。
彪雅もそちらに目を向けた。

「ーーおっかぁ、おっかぁ何処ぉ」
幼い子供が、人気の少なくなってきた町中でウロウロとしていた。
所謂、迷子というものだった。

「大変!」
「あ、おい!?」
彪雅の制止も聞かず、桜華は一目散にその子供の方へと走り出した。
「僕ちゃん、どうしたの?」
しゃがんで子供と視線を合わせながら桜華は優しく尋ねる。
子供は泣きそうな顔をしていた。
「おっかぁと、はぐれちゃった」
「そう...じゃあ早くお母様を探さないと...」
きょろきょろと辺りを見渡すが、女性の姿はもう数える程にしかいなかった。

「おっかぁがいない...おっかぁ...」

「ど、どうしよう...早くこの子をお母様の元へ帰してあげないと...」
「....ったく」
ひょいっ、と彪雅が片手でその子供を抱え込む。
「わぁっ」
「ちょ、ちょっとあんた!?」
「うるさい。いいから母親探すぞ」
子供を小脇に抱えたまま小走りで走り出す。もちろんはぐれない様に桜華の手を取って。

「......っ」
もちろんそんな経験の無い桜華は動揺しまくりだった。

まだ残っている町人たちに尋ね、時に母親の特徴を探して、何とかその子供を母親の元へと返す事が出来た。

だが既に空は怪しく染まっていた。


「急ぐぞ!」
「えっ、...きゃあっ!?」

ぐいっ、と引っ張られたかと思ったとたん、突如視線が地面に向けられていた。

拾 【強襲】→←捌 【触れ合い】



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設定タグ:オリジナル , 和風 , 妖怪   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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雪麻呂(プロフ) - 雨咲☆智華さん» 初コメありがとうございます!!それに面白いだなんて嬉しいです(≧∇≦)拙い文章力ですがこれからもよろしくお願いします(´∀`*) (2017年5月28日 22時) (レス) id: 91fb32a126 (このIDを非表示/違反報告)
雨咲☆智華(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!なんていうか、こういう和風な話?すごい好きです!!更新待ってます! (2017年5月28日 21時) (レス) id: e9c8a5e518 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雪麻呂 | 作成日時:2017年5月7日 5時

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