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拾弐 【帰還】 ページ13

ーー彼が、彪雅が見る見るうちに姿を変えていく。
色素の無い真っ白な長髪に尖った耳、鋭い爪と牙。暗闇の中にぷかりと浮かぶ金色の瞳。

そして人間には無い、特徴。

額の双方から伸びる、尖ったそれは、
まさしく角(つの)で。



「ーーーー《鬼》...」




「...!、桜華!!」
「姫様!!」

桜華の静かな目覚めに華柳と使用人は勢い良く彼女の顔を覗き込んだ。

「よかった!目が...覚めたんだな」
「ああ...姫様...!」
「...わた、し...」

徐々にはっきりしていくぼやけた視界。桜華はゆっくりと首を動かし、
《彼》の姿がない事に気付いた。



「.....あいつは?...彪雅は....??」


彪雅、という名前に華柳は苦そうな表情を浮かべ、使用人はキッと眉を釣り上げた。

「ーーあの男は妖です!!姫様、もうあの男はここにはいません!!逃げたのです!!!」

「え....?」
使用人の荒げた言葉に桜華は息を飲んだ。
すると華柳がその使用人の手を軽く叩いた。

「やめないか。...桜華、よく聞くんだ



彼は...彪雅はお前を此処まで抱えて連れてきたのだ」
「彪雅が...」
「そうだ。そりゃ驚いたさ...最初見たときは彪雅かどうかわからなかったからな」


ーーーーー数刻前ーー

「2人とも遅すぎる...!何かあったのだろうか...!?」
もう妖達の鳴き声も響き渡る時間だというのに、未だに帰ってこない2人に華柳はますます不安になる。

と、そのとき。



「城主様!!!





姫様、とーーー異様な男が...!!」


使用人の焦る声に華柳は駆け出した。




いざ出てみれば、門番や使用人達に武器を突きつけられている人影が見えた。

まるで老人のように真っ白な髪に、真っ黒な目に浮かぶ金色の瞳、そして額の角。

(妖...!?だが...)

妖の放つ禍々しい邪気が、その者からは全く感じられない。むしろ清らかで澄んだ気配を感じた。
そしてその胸には我が娘が抱かれていたのだ。
まるで壊れ物を扱うかのように、優しく。

(何なのだ、此奴は...桜華は彪雅と共にいたはず........っ!)

よくよく見れば、あの鎧。自分が彪雅に渡した物ではなかったか。
と、いうことは。



「まさかーーー....彪雅、なのか?」



「..........申し訳ございません、華柳殿」
白髪の男の口から、謝罪の言葉が漏れた。

「この彪雅、ご息女を危険な目に遭わせてしまいました...ですが、ご息女はこの通り無傷です」
「.....彪雅、なんだな」


金色の瞳が僅かに震えた。

拾参 【鬼を捜しに】→←拾壱 【変化】



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設定タグ:オリジナル , 和風 , 妖怪   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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雪麻呂(プロフ) - 雨咲☆智華さん» 初コメありがとうございます!!それに面白いだなんて嬉しいです(≧∇≦)拙い文章力ですがこれからもよろしくお願いします(´∀`*) (2017年5月28日 22時) (レス) id: 91fb32a126 (このIDを非表示/違反報告)
雨咲☆智華(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!なんていうか、こういう和風な話?すごい好きです!!更新待ってます! (2017年5月28日 21時) (レス) id: e9c8a5e518 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雪麻呂 | 作成日時:2017年5月7日 5時

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