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拾 【強襲】 ページ11

「ちょ、ちょ、ちょっとぉ!?」
まるで米俵を抱えるか如く。傍に抱えられほぼ地面しか見えない状態で桜華は吠えた。
「なにこれ!?え、なにこれ!?」
「お前の速さに合わせたら妖どもに襲われるぞ!」
「ちょ、何ですって!?......ッ、」

ぞわり。

冷たい風の様なものが、頬を撫でた。
もしやこれは、

(妖の...邪気...!?)

静かになった桜華を横目に彪雅は走る速度を速める。
が、

「ーーーま、待って!!!」

桜華が急に大声を張り上げた。

「ッチ、なんだ!?」
舌打ちしながらも彪雅は立ち止まる。
「簪が...!!」
カシャン、と簪が地面に落ちた。

「今は諦めろ!行くぞ!!」
「駄目よ!だって...あれは...!!」

籠の鳥だった自分が初めて籠から飛び立てた証ーーー。

「今はそれどころじゃないだろうが!!」
彪雅の低い怒声に桜華はびくりとした、


そのときだった。








『みぃいつけたぁぁあ....』



人間とは違うおぞましい声が2人の鼓膜に響いた。
気持ち悪いくらいの邪気。声。気配。全て背後からだ。



バンッッ!!

「きゃ...ッ!?」
「ぐっ...」

凄まじい衝撃に桜華は呆気なく彪雅の腕から放たれた。

ドサッッ、と投げ出され、桜華は何が起こったのかわからず顔を上げた。

「ーーーひ、」

ぎょろり、と黄ばんだ大きな目が桜華を捉える。その身体は歪で頭と腕が異様に大きく、肌は浅黒い。コフー、と大きな口から異様な臭いの息を吐く。...それは間違いなく妖だった。

桜華は息を飲んでずりずりと後ずさる。が、その妖のすぐそばで這いつくばっている彪雅の姿を捉えた。
「あ、あんた大丈夫なの!?は、はやく逃げないと....ッッ


ひ、彪雅!!!」

桜華の声に彪雅はぴくりと体を震わせた。


「ーーー逃げろ」
「え...」
「良いから、さっさと城へ戻れ。道は分かるだろ」
「ひ、彪雅....?」




「早く行け!!!死にたいのか!???」


彪雅がギロリと桜華を睨んでそう叫んだ。

「っ、....」
桜華は泣きそうになりながらも走り出す。


『ぁぁあ...だめだよぉ、にげちゃあ...』

黄ばんだ大きな目が桜華を追いかける。


「ーーー待て、デカブツ」
『??』
ゆらりと立ち上がった彪雅に妖はその口をにぃぃいと歪ませた。
ハァァア、と舌と牙を剥き出しにして彪雅に近付いた。が、

「俺を喰ったところで腹を壊すぞ?」

『ーーーは』

低い笑い声、そして異様で何処か清らかな気配に妖はびくりと震えた。

もちろん、その気配は桜華にも感じた。

拾壱 【変化】→←玖 【家路】



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設定タグ:オリジナル , 和風 , 妖怪   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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雪麻呂(プロフ) - 雨咲☆智華さん» 初コメありがとうございます!!それに面白いだなんて嬉しいです(≧∇≦)拙い文章力ですがこれからもよろしくお願いします(´∀`*) (2017年5月28日 22時) (レス) id: 91fb32a126 (このIDを非表示/違反報告)
雨咲☆智華(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!なんていうか、こういう和風な話?すごい好きです!!更新待ってます! (2017年5月28日 21時) (レス) id: e9c8a5e518 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雪麻呂 | 作成日時:2017年5月7日 5時

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