298話 寄り添う親子12 ページ48
朔太は2年前に離婚をした。
亜子を引き取り父子家庭となり、男手で一人娘を育てている。
離婚の原因は妻の浮気であった。
元々は商社のキャリアウーマン。
亜子を出産するとすぐに仕事へ復帰をした。
出張が多い仕事でほとんど家にいない妻。
自営業の朔太は亜子を工場の傍らに置いて仕事に励む。
亜子が小学校に入学した日の夜だ、妻は突然一枚の紙を朔太に渡した。
離婚届け。
妻の名前は記入されていた。
「好きな人がいるの」
相手は同じ会社の上司。
アメリカへ転勤になりそれについて行くのだと言う。
「彼を支えていきたいの。仕事も向こうで続けてゆけるし」
妻が自分に気持ちがないことは気が付いていた。
亜子はどうする気なのだろうか？
妻の言葉は信じられないモノだった。
「置いていくわ。まだ小さいし、彼も私も新しい土地で亜子に構っている時間はないし」
わが子と離れることが悲しくないのか？
心配ではないのか？
「亜子は手のかからない子だけど住み慣れたここ(日本)の方がいいでしょう本人も。」
手のかからない子。
そうじゃないと朔太は言ってやりたかった。
ずっと亜子は我慢していた。
仕事に忙しい母に我儘を言って困らせないように我慢していた。
「親権はあなたに。亜子にかかわるすべてを任せるわ。ちゃんと弁護士さんにその旨は手続きをしてもらうから」
慰謝料をどうするとまで言ってきた。
自分の原因で離婚するのだから勿論いらない。
反対に請求されることも覚悟をしていると。
朔太の出した条件は今後一切亜子に会わないこと。
彼女は二つ返事、翌朝亜子に別れを告げると家を出て行った。
「……亜子ちゃん寂しかったでしょうね」
話を聞いた雅紀の心がチクリ痛んだ。
「亜子に聞いたことがあるんだ。母ちゃんがいなくて寂しくないかって……」
亜子は素直に答えてくれた。
寂しい、寂しいけど父ちゃんがいるから大丈夫だと。
「亜子がお嫁に行くまでずっとそばにいて。ん？違う、お嫁に行くときは父ちゃんも連れて行くからずっと一緒にいて」
嬉しい事まで言ってくれた。
「親父から受け継いだ整備工場を守っていくのもあるけどさ」
家に作業場がある今の状態は娘のそばにいてやれる最適の環境でもある。
「亜子の為にも工場を売るわけには行かないんだ」
娘を愛する父がここにいた
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むつき(プロフ) - だんぼさん» おひさしぶりです！今回のお話は重くてなかなか文章が出てきませんでした。そんな優しい言葉を言われたら泣いちゃいます。ありがとうです。これからもがんばります。 (2014年4月12日 23時) (
レス) id: 4345b608cc (このIDを非表示/違反報告)
だんぼ(プロフ) - むつきさん、お久しぶりです。潤くんのお話…切なかった…白石さんの記憶を思うと… そしてそれを感じてしまう雅紀と支えるにの…5人の絆と優しさに 感動しました！ むつきさんのお話って本当に温かくて、後からじんわり効いてくる…そんな感じですね… (2014年4月12日 13時) (レス) id: 5df5e1bd71 (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - みのりさん» はじめまして。読んで頂き嬉しいです。ほっこりが伝えて行けるようにこれからも精進致します。 (2014年4月9日 23時) (レス) id: 4345b608cc (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - ケイさん» すべてを受け止める優しさは強さでもありますよね。彼にはそんな力があると思います。コメントありがとうございます。 (2014年4月9日 23時) (レス) id: 4345b608cc (このIDを非表示/違反報告)
みのり - 初めてコメします。このお話し大好きです。5人のホッコリ感もとっても素敵です。ずっと続けて下さい。 (2014年4月9日 10時) (レス) id: 5959279da5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：むつき
| 作成日時：2014年3月8日 19時
