27.安堵 ページ27
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拓也さんは家に帰りつくまで、何もしゃべらずに私の手を引いた。
家の扉を開いて中に入ると、拓也さんは安堵の表情をして座り込んだ。
「あ〜…マジ焦ったああ…バレたかと思ったわああ」
いつもの声で緩んだ拓也さんを見て、私も気が緩んだ。
「ほんとですよね…それより、拓也さんの声の変わりように驚きましたけど笑」
「な?すごいやろ??ボーカル舐めんなよ笑」
「てか!何ですかタクミって!なんであのクソ野郎の名前なんですか!笑」
「いや、とっさに出たのがそれやったんよ〜ほんまごめんなぁ」
せめてもっと別のところにしてほしかったが…
あの危ない場面でとっさに対応してくれたのは助かった。
「にしても、なーんかあの子嫌な感じしたんよなあ」
「…ああ、だってあの子、私のこと嫌いですからね。」
「え、なんで?」
「…元恋敵…みたいな?」
「……まさかとは思うけど…」
「…ええ、あの元カレの浮気相手ですよ…」
近藤未来は、私の元カレであるたくみと別れるきっかけとなった浮気相手である。
未来はサークルに入部後、たくみに一目ぼれをしていたらしい。
しかし、なかなか告白することができず、私が2年になったクリスマスに、たくみと私が付き合ってしまったのだ。
そこから未来の恨みを買うようになり、去年の秋ごろからたくみと頻繁に浮気行為をしていたようだ。
「なるほどなあ〜女の子って怖いなあ」
「ほんとですよ…まあ、コロナで会うこともないでしょうし、何もないとは思うんですけどね…」
しかし、浮気して彼氏を奪ったのにもかかわらず、平然と声を掛けてくるメンタルには尊敬する。
もうこれ以上は関わらないでほしいものだ。
「ま!とりあえずメシ食おうや!今日は俺が作るで!」
「…ですね!ありがとう!楽しみです!」
不安は残るが、拓也さんの笑顔に少し心が救われた。
拓也さんの明るさには、いつも救われている。
拓也さんの作ったチャーハンを食べながら、二人で談笑した。
日が落ちるまではそう時間がかからず、日が暮れたころに私たちは家を出た。
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作者名:ゆき | 作成日時:2020年7月16日 1時