俺の好きな人は近界民だった。え、まじで？ (ページ33)

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キーンコーンカーンコーン…

授業が終わり、帰る準備をするもの、部活動へと急ぐもの、ノートを綺麗にまとめ続けるもの、先生に質問をしに行くもの、と様々に別れる。

俺は一番最初の帰る準備をするものだ。

「とりまる」

かばんに教科書を入れながら今日はバイトもないし、修の訓練メニューでも考えるか。

玉狛に顔を出そう。

確か今日の夕飯当番は…とどうでもいいことを頭に浮かべていたら、不意に後ろから声がかかった。

一緒に帰る約束をしていたとはいえチャイムがなってすぐなのに、走ってきたのか、うっすらと汗をかき、居心地の悪そうな顔をした彼女がいた。

烏丸「どうした。もう帰る準備できたのか？」

「うん、できた、よ。

…じゃ、なくて、さ、」

歯切れの悪い物言いにハテナを浮かべる。

「お昼の人に、謝りに行きたい。」

烏丸「お昼…影浦先輩か？別に大丈夫だろ。」

「違う！その人じゃなくて、あの、お昼にとりまるより先に来てた…！」

あー、出水先輩の事か。例に漏れず名前を忘れたんだな。

烏丸「出水先輩の事か？」

「そう！その人！いずみ、いずみ、いずみ…
よし、覚えた。」

小声で出水先輩の苗字を繰り返し呼び、記憶しようとする。

…本当に3回だけで覚えたのか…？
こいつが…？

烏丸「出水先輩も大丈夫だろ。どっちかって言うとあの時悪かったのは圧をかけてた出水先輩だし」

「でも、何も言わずに逃げちゃった…
無視は良くないって、お父さんが言ってた。

悪いことをしたら、謝らなきゃいけないって。」

本当に反省しているのか、目を伏せて暗い顔をしている。別に放っておけばいいのに。

出水先輩のことだ、明後日には忘れている。

烏丸「わかった。今から出水先輩のクラスに行ってみよう。

もし居なかったら本部には顔を出すはずだから、そっちに行こうか。」

「ありがとう、とりまる！」

一緒に行くすべを伝えると、ぱぁっと顔を明るくする。

かわいいなぁ、なんて油断していると、表情筋が緩むから気が休まらない。