【呪術廻戦】双子の弟がいるとか聞いてない。【両面宿儺】

春の勇気 ページ40

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彼──虎杖悠仁との出会いは春、一年程前に遡る。


第一印象は正直微妙。


公立高校にしては明るすぎた髪色も、距離感に見合わない大きな声量も、誰に対しても分け隔てなく接する良すぎた人柄も全てが眩しすぎて。

良い人だと思う反面、きっと他人止まりなんだろうと彼を知ろうとしなかった。




第二印象は、変な人。


確か二回目の席替えだったか。兎に角一学期のいつかの席替え、一番後ろの窓際の席になって密かに喜んだ私の隣に座ったのが悠仁だった。

一切の抑揚がない淡々とした喋りのおばさん先生の声に揺られながら、大きな欠伸をしていたのは悠仁。
春の窓の外を眺めながら、ふと耳に入った先生の言葉に乗じて下らないギャグを呟いたのは私。



誰に拾われるつもりもなかったその声に、数秒遅れて吹き出したのが悠仁だった。その後、彼は先生に怒られていたんだっけ。何だか懐かしい。





悠仁との出会いにロマンス地味たそれは何一つなかった。


ただのクラスメイト。ただの隣の席の人。

そんな彼と話すようになったのは些細な偶然。

そんな彼に惹かれていったのは多分時間の問題。





──悠仁が誰かと交際中だなんて話は聞いたことがなかったし、悠仁が誰かを好きだという話もまた然り。


そんな彼が、一クラスメイトの女子である私とずっと一緒にいてくれたのだ。
まともな恋愛経験を積んでこなかった私は、それはそれは盛大に舞い上がってしまって。そして盛大に勘違いしてしまって。




春休みに告白して、振られた。

多分、人生で一番泣いた。





そのまま自然と話さなくなるのかと思えば、神様は意外と意地悪ならしくって。

二年のクラス替えで私達はまた同じクラスになった。

教室の前で目が合って、二人とも曖昧に笑った。





悠仁は周りの男友達に私の告白を話してはいないようだった。本当にどこまでも優しい人だった。
私も誰にも相談してなかったから、こうしてあの春の勇気は私達二人だけの秘密になった。私達は友達を続けた。




優しい彼がなるべく気まずくならないように話しかけてくれたのを私は知っている。

だから私も、あの好意までもを有耶無耶にする訳じゃないけれど、今持てるだけのありったけの友情の好きを彼に伝えた。

おどけた振りは、自分を守る為だった。




そんな彼に、ずっと好きだったと言われた。

私は、何も言えなかった。


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