決断の時 ページ39
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Aの手を掴んで立ち竦む悠仁の後ろ姿を認めた。
俺に気づき目を見開いて固まったAと視線が交わった。
そんなAの零した涙を、俺は確かに、見たから。
｢……悠仁っ、！！
お前っ……、今あいつに何した……！！｣
走り去る彼女を追いかける余裕は生憎持ち合わせていなかった。
明らかに何かしらの起こった現場。何の考えもなしに、ただ怒りに任せて悠仁に詰め寄る。
──怒り？……あぁ、そうだ。俺は怒っているんだ。Aにあんな顔をさせた悠仁に、怒って。
掴んだ胸ぐら。ギリギリと籠る力に、悠仁は特に興味を示すわけでもなかった。
ただ詰め寄った俺を頭の上から足の先までゆっくりと眺め、まるで他人事のような口振りでこう言うのだ。
｢ははっ、怖え顔｣
｢……っ、……お前｣
｢何もしてないよ。
……ただ、俺は伝えたいこと伝えたから。｣
いつものヘラヘラとした笑いは何処へ消えてしまったのだろうか。
悠仁は冷たい琥珀色の瞳を力なく動かせば、面倒くさそうに溜息を吐きながら俺の手を払い除けた。
───自分の気持ちに気が付かない程の鈍物でも馬鹿でもなかった。
だから今悠仁が口にした“伝えたいこと”の内容も、俺は悲しいかな察してしまって。
その全てに気づいた上で、俺のこの甘えを恋と呼びたくなかったのだ。
ヘラヘラと気の抜けた阿呆面を見せるAが愛しいと思った。
恐怖に屈さず身を呈して俺を守ってくれた彼女の強さを見た。
俺の為に涙を流す彼女の優しさを知った。
……そんなの、惚れるなという方が無理な話だろう。
それでも想いを伝えられなかったのは、自分が彼女に相応しい人間ではないと思ったから。
誰からも好かれる彼女には、誰からも好かれる悠仁のような人間が相応しい。
｢アンタみたいな不良が関わったから、Aは──｣
俺みたいな、人間は。
｢お前もさっさと素直になれよ。｣
悠仁の手が肩に乗る。
もう、何を言い返す気力もなくて。
｢後悔しても俺は知らん。｣
動けなくなった俺を他所に、悠仁が｢腹減ったなー｣と呑気な声をあげながら家へ入る。
なぁ、待てよ。お前は、Aは。
俺は、一体どうすれば。
｢……っ、｣
きゅうと握りしめた拳。
吐いた息が震えるから、俺はそっと目を閉じた。
決断の時が、着実に迫っていた。
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眠民。 - 完結おめでとうございます!!私は虎杖ガチ勢(既視感)なのですが、ゆきさんのお話がきっかけで宿儺沼にもハマりかけています‥!受験生なのに神作品ありがとうございました!頑張ってください!!応援してます~!! (11月26日 14時) (
レス) id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
シロツメココロ - 完結おめでとうございます！ ゆきさん小説が私の宿儺推しに目覚めさせてもらったキッカケです。もう、宿儺小説を読み漁って漁って……次回は夏油さんですか！頑張ってください。受験…私も来年通る道です。応援しています (2021年3月17日 18時) (レス) id: a3d2b1e1b5 (このIDを非表示/違反報告)
琴吏(プロフ) - 完結おめでとうございます！！ゆきさんの書く宿儺と悠仁が大好きです、、泣 宿儺が幸せな恋を描いて下さりありがとうございました！ (2021年3月17日 14時) (レス) id: 94ce9bc83e (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - ちっぷさん» ちっぷさん！コメントありがとうございます！！前も言ったかもしれませんが、ちっぷさんは宿儺メインを書くきっかけになった方と言っても過言ではありません！新たな可能性を与えてくれて本当に感謝してます！最後までお付き合いありがとうございました！ (2021年3月16日 22時) (レス) id: 19e6a01ed0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 麦茶さん» 麦茶さん！沢山のコメントありがとうございます！！とっても励みになりました！やっぱ皆宿儺様好きなんだなあって……笑 こちらこそ、貴重なお時間をこのお話に割いて頂けて嬉しいです！！ (2021年3月16日 22時) (レス) id: 19e6a01ed0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆき
| 作成日時：2021年2月25日 23時
