嫌いじゃない ページ35
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次第に落ち着いていく息遣い。しかし完全に離すタイミングを失ってしまった俺は、どうすることも出来ず。
Aの細い手が縋り付くように俺の背に回ったから。拒むのもどうかと思い、椅子からベッドの端に移動して距離を詰めた。
……今あの母親が入ってきた時こそ、俺は終わりそうな気がするが。
｢……俺は、……、
お前が来てくれて助かったぞ。｣
いや、違うだろ。
言うべき言葉は他にある。
慣れない言葉。口にするには少し気恥しい、大切な言葉が。
｢助けに来てくれてありがとう、A。｣
Aが大きく息を呑む音が聞こえた。
呑んで、また涙が溢れ出る気配がしたから、俺は弱めていた手を再び動かして。
｢すく、な……｣
｢……。｣
｢すくなぁ、……すくな｣
｢何度も呼ぶな。聞こえてる。｣
俺の口はどうにも素直になってくれやしない。
俺の存在を確かめるように何度も名前を呼ぶAが、少し可愛らしくて、俺は。
｢すくなっ、死んじゃうかと思ったぁ……｣
｢そう簡単に死なん｣
｢血ぃ、いっぱい出てたもんん……｣
｢……あー……、だから泣くな。俺はここにいる。｣
死んじゃうかと思った、なんて。
俺の方が、何倍も、何十倍も。
──倒れていくAを見た時、俺は一番に自分を憎んだ。
あぁ、やっぱりって。
俺なんかが関わったから。俺なんかが、少しでも期待してしまったのが駄目だったんだって。
だから、怖かった。
目を覚ました時、Aが俺を拒むような気がして怖かった。
それなのに、やっぱり、お前は。
｢宿儺、がっ、……無事で良かった｣
どこまで行っても、他人の心配ばっかりで。
｢……ほら、もう子供のように泣くんじゃない。｣
体を離して、顔を見つめて。
白い頬に指を這わせ、止まりそうにない涙を親指で拭った。
｢───お前の笑った顔は、嫌いじゃない。｣
だからもう、俺の為に泣くのはやめてくれ。
俺が俺を許せなくなる前に、どうか。
俺の言葉を聞いたAは、しゃくり上げる声に蓋をしてしっかりと俺の目を見た。
笑って見せたのは下手くそなそれ。
でも、まあ。
その阿呆面も、俺だけに向けられたものなら。
涙に沈んだ瞳に、俺だけが映っているのだとしたら。
それも、悪くはないか、なんて。
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眠民。 - 完結おめでとうございます!!私は虎杖ガチ勢(既視感)なのですが、ゆきさんのお話がきっかけで宿儺沼にもハマりかけています‥!受験生なのに神作品ありがとうございました!頑張ってください!!応援してます~!! (11月26日 14時) (
レス) id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
シロツメココロ - 完結おめでとうございます！ ゆきさん小説が私の宿儺推しに目覚めさせてもらったキッカケです。もう、宿儺小説を読み漁って漁って……次回は夏油さんですか！頑張ってください。受験…私も来年通る道です。応援しています (2021年3月17日 18時) (レス) id: a3d2b1e1b5 (このIDを非表示/違反報告)
琴吏(プロフ) - 完結おめでとうございます！！ゆきさんの書く宿儺と悠仁が大好きです、、泣 宿儺が幸せな恋を描いて下さりありがとうございました！ (2021年3月17日 14時) (レス) id: 94ce9bc83e (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - ちっぷさん» ちっぷさん！コメントありがとうございます！！前も言ったかもしれませんが、ちっぷさんは宿儺メインを書くきっかけになった方と言っても過言ではありません！新たな可能性を与えてくれて本当に感謝してます！最後までお付き合いありがとうございました！ (2021年3月16日 22時) (レス) id: 19e6a01ed0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 麦茶さん» 麦茶さん！沢山のコメントありがとうございます！！とっても励みになりました！やっぱ皆宿儺様好きなんだなあって……笑 こちらこそ、貴重なお時間をこのお話に割いて頂けて嬉しいです！！ (2021年3月16日 22時) (レス) id: 19e6a01ed0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆき
| 作成日時：2021年2月25日 23時
