噛み締めろ ページ29
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痛い、痛い、何だ、何が。
ぽたぽたと頬を伝って地面に落ちる血は紛れもない俺のもの。力の入らない右手で頭を抑えれば、赤一色に染って。
状況が呑み込めぬまま、振り向いて俺を殴ったであろう人物を睨みつけた。
「はっ、……こいつ化物かよ」
「まーま。どうせ立てねえよ。気失われても困るだろ。」
新たに現れた男二人。もう尋ねるまでもなく元いた男のグルであろう。
右手に握られるはバット。木製ではない。それを、容赦なく……駄目だ、頭が痛む。視界が眩む。
「俺達さー、お前のせいで停学くらってんだわ」
「お前みたいな馬鹿とは違って、俺達学校ではそれなりに真面目だったの。」
「停学沙汰で指定校はもちろん取り消し。若人の未来を奪った罰として、泣いて跪いて謝ってくれなきゃ、ね?」
何を言っているのか、理解が出来なかった。したくもなかった。
自分の悪事を棚に上げて、俺を恨み、挙句こんな犯罪紛いのことまでして?
息を吸う度に身体中が傷むが、死ぬ程じゃない。浅くなる呼吸に蓋をして、目の前の男をきっと睨み。
「……こと、わる」
「あ?」
震える足を立たせて、顔に付いた血を拭った。
大丈夫だ。傷は浅い。
「お前らの重ねた罪に対して、それ相応の罰が下っただけだろう。」
「……。」
「己の罰は己で噛み締めろ、俺は知らん」
はっ、と鼻で笑って見せれば、案の定怒りに身を任せた男達がこちらに向かって走ってくる。
不意打ちじゃなければどうってことは無い。武器を持っているやつは逆に武器がなければ何も出来ん。
一人。腹に一発。
二人。顔面に蹴りを。
あと、一人。
「……っ、……!」
───が、既に手負いの俺が無傷の三人に適う訳もない。
片付けた筈の二人が再び立ち上がり、後ろを取られてどうしようもなく。
「あれっ、……随分カッコイイこと言ってたのに、苦しそうだね。」
「……っ、黙、れ……」
「謝れば許してやるつってんじゃん。土下座の仕方、分からないわけじゃないでしょ?」
「ゴミに下げる頭などない」
こんな奴らに謝るくらいなら死んだ方がマシだ。
「そうか、死ね。」
顔面に向かって飛んでくる拳。
防ぎきれず、痛みを覚悟して目を閉じた、と同時。
「────……いっ、てぇ……」
ごん、と鈍い音が一つなり、俺に殴りかかろうとしていた男の呻き声が耳をついたのだ。
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眠民。 - 完結おめでとうございます!!私は虎杖ガチ勢(既視感)なのですが、ゆきさんのお話がきっかけで宿儺沼にもハマりかけています‥!受験生なのに神作品ありがとうございました!頑張ってください!!応援してます~!! (11月26日 14時) (レス) id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
シロツメココロ - 完結おめでとうございます! ゆきさん小説が私の宿儺推しに目覚めさせてもらったキッカケです。もう、宿儺小説を読み漁って漁って……次回は夏油さんですか!頑張ってください。受験…私も来年通る道です。応援しています (2021年3月17日 18時) (レス) id: a3d2b1e1b5 (このIDを非表示/違反報告)
琴吏(プロフ) - 完結おめでとうございます!!ゆきさんの書く宿儺と悠仁が大好きです、、泣 宿儺が幸せな恋を描いて下さりありがとうございました! (2021年3月17日 14時) (レス) id: 94ce9bc83e (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - ちっぷさん» ちっぷさん!コメントありがとうございます!!前も言ったかもしれませんが、ちっぷさんは宿儺メインを書くきっかけになった方と言っても過言ではありません!新たな可能性を与えてくれて本当に感謝してます!最後までお付き合いありがとうございました! (2021年3月16日 22時) (レス) id: 19e6a01ed0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 麦茶さん» 麦茶さん!沢山のコメントありがとうございます!!とっても励みになりました!やっぱ皆宿儺様好きなんだなあって……笑 こちらこそ、貴重なお時間をこのお話に割いて頂けて嬉しいです!! (2021年3月16日 22時) (レス) id: 19e6a01ed0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆき | 作成日時:2021年2月25日 23時